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オイディプス王の妻イオカステオイディプス王の妻イオカステ〉イメージ

ソポクレス作『オイディプス王』No.2
〈前王ライオスを殺した犯人は、追放か死罪〉と布告したオイディプス王。
王妃イオカステに前王の殺害された状況を聞くうちに、自分が過去に殺した人物がライオス殿ではないかという懸念がどんどん膨くらんできます。
「あの予言者テイレシアスめ、本当は目が見えるのではあるまいか!」

オイディプス王[2]前王ライオスを殺したのは誰だ⁉︎

ソポクレス作『オイディプス王』No.2
コロス(合唱隊)=テーバイ市の長老

(都市テーバイ。王の館の前庭。神官とコロス、市民がゼウスの祭壇の前に)

オイディプス王 vs 宰相クレオン

(宰相クレオン、登場)

クレオン
町の人々よ、オイディプス王が私に恐ろしい罪を着せたと聞いた。
予言者テイレシアスが私のさしがねで偽りの言葉を吐いたと王は言われたのか?
コロス
私たちには分かりかねますが、怒りにまかせて出たものと思われます。

(オイディプス王、登場)

オイディプス王
クレオン、よくもここに来れたものだな。目くらのテイレイアスと謀り、私が先王ライオス殿の殺害者であると言わせたな!
それで、最初からテイレイアスを呼ぶよう勧めたのであろう。ライオス殿が殺された時、あやつはすでに予言者であったのか?
クレオン
なぜ、そんなことを聞く。あの方は今と同じように、予言の技でもって尊ばれていた。
オイディプス王
では、その当時、おれのことで何か言ったことはなかったのか?
クレオン
私の前では、確かに一度もなかった。
オイディプス王
それを今になって明かすのは、何らかの策があってのことではないのか!
また、目くらの者が一人で企てることではないであろう。
クレオン
私にも釈明させてくれ。あなたは私の姉イオカステの夫。姉ともども良くしてもらっている。今でも何の恐怖も伴わずに、あらゆる望みをかなえてもらっている。
また、王の仕事は多く、私にとっては煩わしいことばかりで望みはせぬ。

コロス
王よ、クレオン殿の言葉は裏がないように思われます。
オイディプス王
その裏で、何を謀っているか、分かったものではない。
クレオン
それでは、あなたは私をどうしようというのだ。追放しようとするのか。
オイディプス王
おれが望むのは死だ。追放ではない。
コロス
王よ、早計は失敗のもとでございます。もう、お二人ともお止めください。
おお、ちょうどよい時にイオカステ様が館よりお出ましになりました。

王妃イオカステとコロス、クレオンをかばう

(王妃イオカステ登場)

王妃イオカステ
王様、クレオンよ、なにを口論していらっしゃるのですか? 国難の最中に、私的な争いごとは恥ずかしいこと、お止めになってください。
クレオン
姉上、全くもって、根も葉もない陰謀を企てたとして、王は私を追放するか、死罪にすると言っているのです。
王妃イオカステ
王様、後生ですから、弟を信じてやってください。
コロス
王様、お願いです。一時の怒りによって、不名誉な罪を着せてはなりませぬ。もともと誓い合った友であり、義兄弟ではありませぬか。
お二人から起こった言い争いが、古い禍いに重なればよくありません。
オイディプス王
それでは、クレオンよ、もう立ち去るがよい。
クレオン
そうしましょう。この人たちの目には私は潔白だったことでしょう。

(クレオン退場)

オイディプス王の不安、私が前王ライオスを殺したのか?

王妃イオカステ
王様、弟が何をしたと言われるのですか?
オイディプス王
予言者テイレイアスを代弁者にして、前王ライオス殿の殺害者が私だと言わせたのだ。
王妃イオカステ
予言者の言葉など信じなくてもよいものです。
なぜなら、ライオス殿には〈我が子に殺される〉とのアポロンの予言がありました。しかし、あの方は三筋の道が合うところで盗賊どもに殺されたからです。
そして、かつてライオス殿との子は生まれて間もなく両足のくるぶしを刺し貫き、家の者に山に捨てさせました。かように、予言者の言葉など当てになりません。
オイディプス王
おお、それは不安なことだ!(オイディプス=腫れた足を持てる
確かライオス殿は三筋の道が交差している処で殺されたとか? また、それはいつ頃のことか?
王妃イオカステ
その地はポーキス、デルポイ、ダウリアからの道が合うところ。王様がこの国の王になられた少し前のことでございます。
オイディプス王
おお、ゼウスよ、あなたは私に何を計られたのか⁉︎
王妃イオカステ
なにとて、これを気にかけられる?
オイディプス王
ライオス殿の背丈は? また、歳はいくつくらいであったか?
王妃イオカステ
あなたぐらいの背丈で、やっと白いものが髪に混じったばかり。
オイディプス王
おお、おれは自分に恐ろしい布告をだしてしまったのか。あの予言者め、本当は目が見えるのではあるまいか!
だが、今一つ教えてくれ、あの方は小人数で行ったのか、大人数で行ったのか?
王妃イオカステ
みんなで5人。ライオス殿を乗せた車が1台でした。そして、一人の者が逃れて帰ってきました。
オイディプス王
ああ、すでにことは明らかだ! 妃よ、そこの消息を伝えてきた者は誰で、今はいずこにいる?
王妃イオカステ
従者として行った家の召使です。あなた様が王になられたの見て、私の手にとりすがり、田舎の牧場へやってくれと嘆願しました。
オイディプス王
はて? では、その者をここに来るようにしてほしい。
王妃イオカステ
かまいませんが、なぜそうなさるか、お聞かせください。

神託の恐怖から逃げたオイディプス王

オイディプス王
このように懸念が湧いてきたからには、隠し立てはせぬ。わが父はコリントス王のボリュポスと母はメロペだ。
ある時、私がもらい子だとの噂がたった。父母は怒って噂を否定したが、おれはその事を確かめるためアポロンの神託を受けに行った。
神託はもらい子かどうかは答えず、〈父親を殺し、母と交わり、忌わしい子をなすだろう〉と。

そんなことは避けたい一心で、おれはそのままコリントスに帰らずに逃げた。その途中、かの三筋の処でライオス殿らしき一行に出くわし、いざこさから一行を殺してしまったのだ。だから、ああ、私が犯人かもしれぬ......

だが、まだ望みはある。そなたはライオス殿の一行を殺害したのは盗賊どもだと言っておったな。
ならば、私ではない。多勢と一人では同じではありえぬであろう!

(オイディプス王、王妃イオカステ退場)

オイディプス王[3]王の悲惨な出自と運命