- ゴッホが何枚も描いた「糸杉」の花言葉は「死・哀悼・絶望」
- アポロン神のお気に入りキュパリッソス、誤って鹿を刺す
- 嘆いた果てに、キュパリッソスは「糸杉」に変身
※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。
ゴッホが何枚も描いた糸杉
糸杉(学名: Cupressus)はクリスマスツリーに使われますが、死の象徴であるため、墓地によく植えられています。イエス・キリストが磔にされた十字架は、この木で作られたという伝説もあります。
フィンセント・ファン・ゴッホが、糸杉を好んで絵画のモチーフに使いました。花言葉は「死・哀悼・絶望」。そんな糸杉には、こんな美少年の変身物語があったのです。
ゴッホ「糸杉と星の見える道」
アポロン神お気に入りキュパリッソスと牡鹿
アポロン神は、美少年キュパリッソスを可愛がっていました。その少年の大のお気に入りが、金色に光った角を持つ牡鹿です。
妖精に捧げられたこの牡鹿の頭は宝石で飾られ、耳からは真珠がたれ、額には革紐で止められたお守りがかかっていました。牡鹿は人を恐れることもなく、どんな家や人にも頭を差しだし、なでてもらうのが好きでした。
毎日、キュパリッソスはこの牡鹿を野原につれていっては草を食べさせ、泉で水を飲ませもしました。また、花輪を頭にかけたり、たわむれて背中に乗ったりもしました。
キュパリッソス「糸杉」に変身
夏のある日のことです。牡鹿は木かげの草地に寝ころんで、涼しい空気をすっていました。そんな牡鹿を、キュパリッソスは誤って投げ槍で刺してしまったのです。
キュパリッソスは、自分も死にたいと思いつめてしまいました。アポロン神が「いつまでも悲しんでいてはいけない」と、どんなに少年を慰めても、少年の心は変わりません。
その上、少年は最後の願いとして、いつまでも嘆いていたいと言いました。
すると、少年の血は枯れて、体が緑色に変わってきました。青ざめた白い額にかかった髪の毛は逆立ち、固くなり天に伸びはじめました。少年の体も緑色に変わり、糸杉に変身したのです。
アポロン神は、悲しげにこう言いました。
「おまえへの哀悼は、わたしがしよう。そのかわりに、おまえはほかの人たちを悼み、悲嘆にくれている者たちの友となるのだ」
糸杉に変身するキュパリッソス