- 女神ミネルウァ(アテナ)が捨てたアウロス
- アポロンvsマルシュアス[音楽競技]
- アポロンの冷酷さ、生きたままマルシュアスの皮を剥ぐ
※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。
女神ミネルウァが捨てたアウロス
アウロスを吹くサチュロス
女神ミネルウァ(アテナ)は、アウロス(ダブルリード)という笛を作りました。その楽器を吹くと頬が自然にふくらみます。それを見ていた神々が笑ったので、女神は笛を地上に捨ててしまいました。その時、アウロスを拾った者に災いが降りかかるよう呪いをかけたのです。
女神ミネルウァの捨てた笛を拾ったのが、サテュロス(半人半獣)のマルシュアスでした。
やがて、マルシュアスはアウロスの名手になりました。また、アポロンの竪琴にも勝るとの評判も得ました。とうぜん、アポロンはいい気がしません。そして、アポロンvsマルシュアスの音楽競技となったのです。
アポロン vs マルシュアス[音楽競技]
アポロン vs マルシュアス[音楽競技]
アポロンvsマルシュアスの音楽競技の審判は、ムーサたち(詩神)でした。これは、明らかにマルシュアスには不利です。なぜなら、ムーサたちはアポロン神の従者ですから。
この音楽競技には、様々なことが言われています。
①マルシュアスが勝利者として去ろうとした時、アポロンは竪琴を上下反対に調弦し演奏しました。このようなことは笛ではできません。アポロンの一種のトリッキーな作戦勝ちです。
②マルシュアスが優勢だったのですが、アポロンが弾き語りを始めたことで勝敗がついたというものもあります。マルシュアスは楽器の演奏競技だったはずで「歌まで評価に加えるのは反則だ」と抗議しましたが、アポロンは「笛を吹くのも、歌と同じようなものではないか」と反論。ムーサたちはアポロンの主張を認めました。
③競技の観衆の中に「王様の耳はロバの耳」のミダス王がいて、王はマルシュアスの勝ちだと主張しました。このことがアポロン神の怒りをかって、「そのような耳は人間の耳ではない」とロバの耳にしたということです。
マルシュアスの皮を剥ぐアポロン
アポロンvsマルシュアスの音楽競技の勝者は、敗者に何をしても良いことになっていました。
勝者アポロンは、冷酷な行為に出ます。なんと生きたままマルシュアスの皮剥ぎをしたのです。
「ああ、早まったことをしたものだ! たかが笛ひとつでこんな目にあうなんて!」そう叫んでいるうちにも、アポロンはマルシュアスの皮を剥いでいきます。剥がれた皮と筋肉のあいだから血が流れでます。
音楽競技を見ていたマルシュアスの仲間のサテュロスとマルシュアスが愛を寄せていたオリュムポスは涙を流しました。また、森の精や妖精、牧神や牧人たちも彼を哀れんで涙を流しました。
プリュギアの大地はその大量の涙を地下深く受け入れ、再び水として地上に出しました。その水は清らかな流れとなり、それがマルシュアス河になったのです。
マルシュアスの皮を剥ぐアポロン
やはりアポロンという神は、冷酷極まりない⁉︎
「怒れる神の肩の上では、動きにつれて矢がカラカラと鳴り、降りゆく神の姿は夜の闇の如くに見えた」
ホメロスは『イリアス 第一歌』で、アポロン神をこう表現しています。この後、ギリシャ軍の多くの兵が死んでいきます。