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このギリシャ・ローマ神話3つのポイント
  1. トラキス王ケユクスに自分の保護を願い出るアキレウスの父ペレウス
  2. ケユクス王が語った、兄ダイダリオンと娘キオネの死
  3. 娘キオネを失った悲しみから、どう猛なタカとなったダイダリオン
    ※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。

アキレウスの父ペレウスが願い出たトラキス王ケユクス

異母弟ポコスを殺したペレウスは、トラキスの地に保護を求めました。トラキスの王ケユクスは、「明けの明星」の息子です。
「ユピテル(ゼウス)を祖父にもつご高名なペレウス殿、この地は客人に親切な国です。嘆願なさらずとも、全ての願いはかなえられましょう」
そう言うケユクスの目からは、涙が流れ落ちました。ペレウスに理由をたずねられると、彼は「兄ダイダリオンと娘キオネ」の話を語りました。

※古代ギリシャでは身内を殺すと、故国を追放される慣しがありました。そして、殺しの罪を他国で清められることを願うのです。

ケユクスのが語った兄ダイダリオン娘キオネの死

トラキスの王ケユクスは、ペレウス一行に語りはじめました。

「多くの鳥たちを怖がらせているあの鳥—どう猛なタカは、はじめから鳥類であったとお考えでしょうか。じつは、もとは性格の荒い気性の人間だったのです。また、すぐに腕力にたよる傾向もありました。わたしの兄で、名はダイダリオンといいます。わたしはいつも愛と平和を願っていますが、兄は激しい戦が好きでした。

兄には、キオネという娘がおりました。その美貌から14歳になると、多くの求婚者がやってきました。あのデルポイのアポロンやキュレネのメルクリウス(ヘルメス)も、彼女に目をつけたほどです。

ある日、アポロンとメルクリウスは同じ日にやってきました。メルクリウスは持ち前のずる賢さから、昼なのにキオネを杖で眠らすと陵辱したのです。夜になって、老婆に化けたアポロンがやってきました。アポロンは優しく娘に接し、ゆっくりと喜びを味わったのです。

月日がたち、キオネは双生児を生みました。メルクリウスの子はずる賢い策略にとんだアウトリュコスといい、アポロンの子は歌と竪琴の名手ピラルモンといいます。

しかし、神に愛され双生児を生んだからといって何になりましょう。キオネは『わたしの方がディアナ(アルテミス)女神より美しい』と女神をおとしめたのです。女神が許すはずがありません。

『わたしのやり方は、あなたのお気に召すでしょう』
ディアナ女神は弓矢を取ると矢を放ち、キオネの舌を射抜きました。彼女は喋ることもできず、そのまま命を落としました」

どう猛なタカとなったダイダリオン

「娘思いの兄ダイダリオンに、わたし(ケユクス)は慰めの言葉をかけるしかできませんでした。しかし、兄には聞く耳もありません。ひたすら娘キオネのことを嘆くばかりです。彼女の遺体が焼かれると、その火の中に4度も飛び込もうとしたほどです。

そして、兄を止めようとした人々を振り切り、走り出しました。その走りは、もはや人間とは思えないほどの速さで、まるで足に翼が生えているかのようでした。そのままパルナッソスの山頂にいくと、崖から身を投げたのです。

哀れに思ったアポロンは、兄に翼を与え空中に浮かばせました。曲がったクチバシとかぎ状の爪も与えました。

ダイダリオンは人間の時の荒々しさはそのままに、どう猛なタカに変身したのです。そして、今でも娘への悲しみを他の鳥たちにぶつけているのです」

「明けの明星」の子でトラキスの王ケユクスは、こう兄ダイダリオンのことをペレウス一行に語ったのです。

獰猛な鷹となったダイダリオン