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このギリシャ・ローマ神話3つのポイント
  1. クラロスのアポロン神殿への参詣を決めたトラキスの王ケユクス
  2. ケユクスの妃アルキュオネの悲しみ
  3. ケユクス王、クラロスのアポロン神殿へ向けて出航
    ※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。

クラロスのアポロン神殿への参詣を決めたケユクス

クラロスのアポロン神殿クラロスのアポロン神殿

兄ダイダリオンがタカに変身したり、女神プサマテのオオカミが現れたりして、トラキスの王ケユクスは不吉なことが多いことを心配して、イオニア海岸にあるクラロスのアポロンの神託を伺う決心をしました。クラロスに行くには、エーゲ海を渡る必要があります。

アポロンの神託を伺うなら、すぐ近くにあるデルポイの神殿にいけばよいのですが、この時は運が悪く(これもケユクスにとっては不吉なことでしょう)、大泥棒のポルパスとその一味のプレギュアイ人にデルポイへの道がふさがれていたのです。

ケユクス王の妃アルキュオネの悲しみ

夫ケユクスからクラロスのアポロン神殿へいくことを聞いた妃のアルキュオネは、涙を流して夫に願いでました。

「わたしがなんの罪を犯したのでしょうか? なぜわたしをおいて、平気で遠くへ行っておしまいになられるのですか? 長い旅に出られるとは、わたしはおそばにいない方がいいのですね。

でしたらエーゲ海を渡らず、かなり遠いまわり道になりますが、陸路をお選びください。長いあいだ寂しい思いをするだけで、いらぬ心配はしなくてすみますから。わたしが怖いのは海です。暗い海を思うだけで、恐ろしくなります。この間も打ち上げられた船の板を見つけました。きっと遺骸のない墓に、名前ばかりが刻まれることでしょう。

また、わたしの父が風神アイオロスなので、海を鎮めてくださるとお思いなのですね。でも風たちはいったん解き放たれると、手がつけられません。南風が猛威を振るうと、稲妻が走り、嵐になり、海が荒れます。

でもどうしてもお出かけのご決心ならば、お願いです、わたしも一緒にお連れくださいますように」

しかし、ケユクスは出航をやめることも、アルキュオネを危険に巻きこともできません。固い約束だけを彼女にしました。
「わたしの父『明けの明星』の光にかけて誓おう。運命が許すかぎり、月が2度満ちるまでには帰ってくることを」

ケユクス王、クラロスのアポロン神殿へ向けて出航

ケユクスの出発ケユクスの出発

出航当日、アルキュオネは海岸の船を見ると、夫ケユクスの前途の不幸を予感したかのように身ぶるし、夫の胸にすがりつきました。そして最後に「さようなら」と言うと、くずれ落ちてしまいました。

だが、そんな二人にはお構いなく、若い船員たちは二列に並ぶと、規則正しく船をこぎ始めました。船が出航すると、ケユクスとアルキュオネの二人は互いに手を振りあって別れたのです。

船が地平線の彼方に消えて見えなくなるまで、アルキュオネは海岸にいました。その後、夫のいない寝室に入ると、ベットの上に身を投げ涙を流します。愛する夫ケユクスがいない寝室は、まるで暗闇の中にあるかのようでした。