- ウェヌス(アフロディテ)の復讐は、太陽神にレウコトエを愛させること。そして、太陽神の愛人クリュティエに嫉妬させることです。
- レウコトエの父王オルカモスは、太陽神と娘の密通を許すこともなく、無情にも娘を生き埋めにします。
- レウコトエが死んでも、太陽神の愛はクリュティエには戻らず、彼女は憔悴しひまわりに変身します。
※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。
太陽神に復讐する女神ウェヌス
太陽神(アポロン)とレウコトエ
ミュニアスの娘レウコノエは『マルスとウェヌス(ビーナス)の浮気』に続いて、『レウコトエとクリュティエ』の物語をしました。
浮気の現場をオリュンポスの神々にさらされたウェヌス(アフロディテ)様は、太陽神にしかえしをします。息子クピドに黄金の矢を太陽神に射るよう命じたのです。
もはや、太陽神の眼はレウコトエだけに注がれています。いつもの日の出の時間に昇らず、日没も狂った時間になったりします。恋は盲目といいますが、時には世界が蝕によって暗くなったりもしました。
レウコトエは、ペルシャの国王オルカモスと絶世の美女エウリュノメの娘。母親の美しさも、成人したレウコトエにはかなわなかったそうです。
ある夜、太陽神は母親エウリュノメの姿になり、レウコトエの部屋を訪れました。娘の頬に口づけすると、こう言いました。「娘と内緒の話がありますので、みなさんは席を外してください」
レウコトエの侍女たちが部屋を出ていくと、太陽神はこう言いました。「わたしが太陽の馬車で天空をかけるから、世界は明るく照らされる。そして、地上の万物が見分けられるのだ。だから、わたしは世界の眼なのだ。そのわたしが、お前を好きになった」
びっくりしているレウコトエに、太陽神は本来の姿を現しました。レウコトエは太陽神のかがやきに圧倒されて、神を受け入れたのです。
クリュティエの嫉妬、レウコトエの父親に密告
今や太陽神に相手にされなくなった愛人クリュティエは、嫉妬に狂いました。恋敵のレウコトエの父親に密通を大げさに話したのです。
気性の荒い父親オルカモス王は、情け容赦もありませんでした。太陽に手をさしのべ「あの方が、無理やりわたしを……」とレウコトエが訴えても、無情にも深い穴に彼女を埋めると、重い砂の山を被せたのです。
すぐ気づいた太陽神が砂を吹き飛ばしても、もはやレウコトエはすでにぐったりしていました。神様は暖かい光線で彼女を生きかえらそうとしても無駄でした。神様は、あの雷火で死んだ息子パエトンいらいの悲しみに襲われたといいます。
しかし、「お前にも天界に登ってもらわなければ」と言って、香ばしいネクタル(神酒)を彼女に注ぎました。ネクタルにとけたレウコトエの体は一本の乳香の木にかわり、地面から生えてきました。
乳香の木
ひまわりに変身したクリュティエ
クリュティエ
レウコトエが死んだからと言って、太陽神の心がクリュティエに戻ることはありません。すでに太陽神の愛は、なくなっていたのです。
クリュティエは憔悴し、食事もとらず痩せ細っていきました。一日中すわり続けて、ただただ天球をかける太陽に顔を向けているだけでした。とうとう体が土にくっつき、草木に変わってしまいました。
こうして、クリュティエは「ひまわり」に変身してからも、いつまでも太陽神を愛して顔を向けているのです。
ヘリオトロープ
※オウィディウス『変身物語』ではクリュティエが変身したのは「ひまわり」ではなく、「ヘリオトロープ」と表記されています。