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このギリシャ・ローマ神話3つのポイント
  1. ウェヌス(アフロディテ)の復讐は、太陽神(ソル、ヘリオス)をレウコトエに恋させ、さらにその愛人であるクリュティエに嫉妬させることでした。
  2. しかし、レウコトエの父王オルカモスは、娘と太陽神の密通を許さず、無情にも娘を生き埋めにしてしまいます。
  3. レウコトエの死後も、太陽神の愛はクリュティエに戻ることはなく、失意の彼女は次第に憔悴し、最後にはひまわりに姿を変えました。
    ※神々の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)で記載しています。

太陽神に復讐する女神ウェヌス

ミュニアスの娘レウコノエは『マルスとウェヌス(ビーナス)の浮気』に続き、『レウコトエとクリュティエ』の物語を語ります。


浮気の現場をオリュンポスの神々に暴かれ、屈辱を受けたウェヌス(アフロディテ)は、太陽神(ソル、ヘリオス)に仕返しをすることを決意しました。彼女は息子クピド(エロス)に命じ、黄金の矢を太陽神に射させたのです。

矢に貫かれた太陽神の心は、たちまちレウコトエへの恋で満たされます。彼は仕事そっちのけで彼女に心を奪われ、日の出の時間に遅れたり、日没が狂ったりすることもしばしば。さらには、恋の熱情が高まりすぎたのか、世界が暗闇に包まれる日蝕が起きることもありました。

レウコトエは、ペルシャの国王オルカモスと絶世の美女エウリュノメの娘です。エウリュノメの美貌も見事なものでしたが、成人したレウコトエの輝きには到底及ばないほどだったと言われています。

アポロンとレウコトエ太陽神(アポロン)とレウコトエ

ある夜、太陽神はエウリュノメの姿に変身し、レウコトエの部屋を訪れました。彼はそっと娘の頬に口づけし、こう告げます。
「娘と内緒で話したいことがあります。皆さん、席を外してください。」

侍女たちが部屋を去ると、太陽神は低く静かな声でこう語り始めました。
「私が太陽の馬車を駆け、天空を巡ることで、世界は光に包まれ、地上のすべてが明らかになる。私は世界の眼だ。そして今、その眼はお前だけを見つめている。私はお前を愛している。」

突然の告白に驚き、戸惑うレウコトエ。しかし、太陽神が本来の神々しい姿を現すと、その圧倒的な輝きに心を打たれ、彼の愛を受け入れざるを得ませんでした。

こうして、太陽神とレウコトエの禁断の愛が幕を開けることになります。

クリュティエの嫉妬、レウコトエの父親に密告

今や太陽神に見向きもされなくなった愛人クリュティエは、嫉妬の炎に飲み込まれてしまいます。彼女は怒りと憎しみに駆られ、恋敵であるレウコトエの父オルカモス王に、二人の密通を大げさに吹聴しました。

気性の荒いオルカモス王はその話を聞き、激怒します。レウコトエが必死に、「あの方が無理やり私に……」と太陽神の行いを訴え、弁明しようとしましたが、父の怒りを鎮めることはできませんでした。王は容赦なく深い穴を掘らせ、娘をその中に閉じ込めると、重い砂の山を覆いかぶせたのです。

太陽神はすぐにその出来事を察知し、急いで砂を吹き飛ばしました。しかし、すでにレウコトエの命は尽きていました。彼は暖かい光線を注ぎ、なんとか彼女を生き返らせようと試みましたが、無駄でした。この時、太陽神はかつて雷火で息子パエトンを失った時以来の深い悲しみに襲われたといいます。

それでも太陽神は、レウコトエを忘れ去ることなくこう告げました。「お前にも天界に登ってもらわなければならない。」そう言うと、彼女の亡骸に香り高いネクタル(神酒)を注ぎました。そのネクタルに包まれたレウコトエの体は、徐々に変化していきました。そして、地面から一本の乳香の木となって姿を現したのです。

この乳香の木は、レウコトエの魂が永遠に残る象徴として香りを放ち続けたといわれています。

乳香の木乳香の木

ひまわりに変身したクリュティエ

クリュティエクリュティエ

レウコトエの死後も、太陽神の心がクリュティエに戻ることはありませんでした。彼女に対する太陽神の愛は、もはや完全に失われていたのです。

絶望に打ちひしがれたクリュティエは、日に日に憔悴していきました。食事をとることも忘れ、痩せ細りながら、一日中地面に座り続け、ただただ天を駆け巡る太陽神を見つめるだけの日々を送ります。

やがて彼女の体は地面に根付き、草木へと変化していきました。そして最後には「ひまわり」となり、その花はいつも太陽の動きを追い続けるようになったのです。

こうして、ひまわりに姿を変えたクリュティエは、永遠に太陽神への愛を示し続ける存在となったのでした。

※オウィディウスの『変身物語』では、クリュティエが変身した植物は「ひまわり」ではなく、「ヘリオトロープ」と記されています。

ヘリオトロープヘリオトロープ