- 妹としての感情にとまどうビュブリス
- 「神々の近親結婚は、神々だけの掟なのだろうか?」
- 「あとはあの人(カウノス)の判断に任せればいい」
※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。
妹としての感情にとまどうビュブリス
アポロンとディオネ(?)の子ミレトスは、ミノス王のクレータ島を離れ小アジアに国を作りました。ミレトスと河神マイアンドロスの娘キュアネエの子が、カウノスとビュブリスの兄妹です。
カウノスと遊んでいるとき、ビュブリスは兄に抱きついたり、キスをしたりしました。それはふつうの兄妹の戯れとは違っていました。ビュブリスは妹としての想いをこえ、女としての振舞いだったのです。
また、カウノスと一緒に誰か美しい女がいると、ビュブリスは嫉妬しました。また、彼女は兄から「妹よ」と呼ばれるより、「ビュブリスよ」と呼ばれたかったのです。
昼間は不純な望みを抱かなかったのですが、夢の中ではビュブリスは兄カウノスに抱かれたりしていたのです。彼女はそんな自分に思い悩みました。
「けっして、夢の中のできごとが現実に起きませんように。でも、あの人(カウノス)は美しい。誰が見たって祖父のアポロン 様のよう。わたしだって恋してしまう。夫としてもきっとふさわしい。でも、わたしは妹だから、困ってしまう。
しかし、眠りには、立会人はいない。だから、ウェヌス(アフロディテ)様、少しは官能の喜びを味わってもいいでしょ。思い出すだけでも、ドキドキしてしまう」
神々の近親結婚は神々だけの掟なの?
ビュブリスはこうも問います。
「サトゥルヌス(クロノス)は妹オプス(レア)を、大洋の神オケアノスはテテュスを。そして、ユピテル(ゼウス)は姉ユノ(ヘラ)を妃として迎えられた。これは、神々だけの掟なのかしら?
ああ、でも、許されぬ恋の火は、心から追い払うこと。それができなければ、命を終えることを願おう。
ところで、恋には2人の合意が必要。わたしはうれしいけど、あの人(カウノス)は罪悪とうつるだろうか。風の神アイオロスの息子たちは、姉妹との結婚を恐れなかった。わたしは、何を言っているの。みだらな想いは遠くへ行っておしまい!
でも、あの人(カウノス)がわたしを恋するようになったら、わたしはその欲情を受け入れる。だとしたら、わたしから先にしかけたらどうだろうか」
【アイオロス】ゼウスの好意から風を支配する力を有し、浮き島であるアイオリア島に住む。男女6人ずつ計12人の子があり、子供たちはそれぞれが夫婦です。
あとはあの人(カウノス)の判断に任せればいい
わたしから先にしかけると決心したビュブリス。
「ビュブリス、お前にそんなことが話せるの? 打ち明けることが? 愛が言わせるのだから、できるに決まっている。でも、できなければ、口で言うのが恥ずかしいなら、手紙で告白すればいい」
ビュブリスはゆれ動く心に打ち勝ち、決心しました。
「あとは、あの人(カウノス)の判断に任せればいい。この狂おしい想いを打ち明けて。ああ、心を燃やすこの火は、わたしをどこに連れて行くのだろう?」