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このギリシャ・ローマ神話3つのポイント
  1. リュキア地方の池にあった女神ラトーナ(レト)の祭壇
  2. 水を求める女神ラトーナに、水をにごすリュキアの農夫たちの横暴
  3. 女神ラトーナの怒り、リュキアの農夫たちをカエルに変身
    ※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。

池にあった女神ラトーナの祭壇

『アポロンとディアナ(アルテミス)が、ニオべの子14人を虐殺』したことは、広く知れわたりました。女神ラトーナ(レト)を崇めない人はいなくなりました。また、女神の昔話を思いだす人もいました。それはリュキアの農夫がカエルになった話です。

「わたしは父の命令で、リュキアから立派な牛を連れて帰ることになったのです。父はリュキア人の道案内をつけてくれました。その男と一緒に牧場を歩き回っていると、池の近くに祭壇が建っていたのです。

案内人は立ち止まって『どうか、わたしにご慈悲を!』と言うと、手を合わせます。わたしも『どうか、わたしにご慈悲を!』とつぶやき手を合わせました。わたしは彼に『この祭壇は、どんな神様のものなのですか?』と尋ねました。

『あの女神ラトーナ様の祭壇です』と案内人は答え、いきさつを話してくれました」

女神ラトーナとリュキアの農夫女神ラトーナ母子とリュキアの農夫

大神ユノ(ヘラ)の怒りから、女神ラトーナは世界中からしめだされて、デロスの浮き島で双子を生みました。その後ラトーナ母子はその浮き島をも離れ、リュキアにたどり着いたのです。たえがたい日差しに、疲れと喉もからからになっていた母子は、この池を見つけました。

池の近くでは、農夫たちがヤナギの小枝、イグザ、スゲを刈り集めています。女神ラトーナは、水を手ですくい飲もうとしました。しかし、農夫たちがそれを邪魔するのです。

「どうして、水を飲ませてくれないのですか? 水はみんなへの共通の恵みのはずです。わたしはここで体を洗おうというのではありません。ただ喉の渇きを癒したいだけです。今のわたしには、一口の水は神々の飲み物ネクタルともなりましょう。また、この子どもたちのこともお考えください。ほら、こうして2人とも手をさしのべています。どうか、一口の水をお恵みください」

こんな女神ラトーナの言葉に、心を動かされない人がいましょうか!

水をにごすリュキアの農夫の横暴

しかし、農夫たちは頑として女神の願いをはねつけました。「これでも立ち去らないか!」と女神をおどし、あちこち飛び跳ねると、足で水底をかき回し、泥で清らかな水をにごすのです。

女神はもはや喉の渇きより、怒りの方が強くなっていました。両手を高く差しあげると、リュキアの農夫たちにむかい「お前たちはこの池で、いつまでも生きていきなさい!」と宣言したのです。

女神ラトーナの怒り、農夫をカエルに変身

農夫たちはたちまち小さくなり、全身を水に沈めたり、頭だけを水面に出したり、泳いだりするようになりました。池の端にはいだすと、また水の中へ飛び込みます。また、しわがれた声で毒づいていることで、口は横に大きく裂けました。

首がなくなり、頭と体の区別はありません。体の大部分は大きなふくれた白い腹となり、背中は緑色になりました。こうして、リュキアの農夫たちは、泥水の中を飛びはねるカエルに変身したのです。

女神ラトーナとカエルになったリュキアの農夫女神ラトーナとカエルになったリュキアの農夫