- メデイア、イアソンの心情を思ってペリアス殺害計画を企てる
- ペリアスの娘たちに「父親が若返る」と希望を持たすメデイア
- ペリアスの殺害「何をするのだ、娘たち? どうして父を殺そうとするのか?」
※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。
メデイアのペリアス殺害計画
イアソンを送り出すペリアス
イアソンの父アイソンは、イアソンが大きくなって戻ってきたら返すという条件でイオルコスの王権を義兄弟ペリアスに委ねました。
しかし、イアソンが戻ってきた時に、ペリアスは王権を返さなかったのです。その上、イアソンを亡き者とするために金羊毛皮をとりに黒海の果てコルキスへ派遣したのです。これが、アルゴー船の遠征でした。
ですから、ペリアスにとってイアソンの帰還は想定外だったのです。また、イアソンの父アイソンが老衰していたため、王権の返還をうやむやにしていました。
夫イアソンの心情を思いやり、メデイアはペリアスの殺害を計画します。そして、夫との不和を装いペリアスの館に逃げ込みました。
父親が若返ると希望を持たすメデイア
メデイアは数々の魔法による自慢話、とりわけイアソンの父アイソンの若返りをペリアスの娘たちに語りました。「わたしたちの父親も若さを取り戻せるかもしれない」と希望を持たせたのです。
「メデイアさん、父を若返らすにはどれだけ報酬を払えばいいの?」と、ペリアスの娘たちは問います。メデイアは彼女たちに気を持たせるため、しばらく沈黙したあと答えます。「では、いちばん年とった雄羊を1匹用意して。薬の力で子羊にして見せますから」
ペリアスの家人が、ただちに老いて痩せ細った雄羊を連れてきました。メデイアは雄羊の喉を裂くと、青銅の釜のなかに薬汁と一緒に放り入れます。すると、みるみる雄羊の体は小さくなっていきます。
ペリアスの娘たちが不思議そうに釜の中を見ていると、「メェー」という小さな鳴き声がし、子羊が飛び出してきたのです。娘たちは、メデイアに父親の若返りをお願いしました。
メデイアの魔法
ペリアスの殺害「何をするのだ、娘たち?」
それから4日後、ペリアスの若返りが実行されたのです。家人に連れてこられたペリアスは、メデイアの呪文によって深く眠っています。メデイアは釜の中に効果もない草や根などを入れると火をつけました。
釜がぐつぐつ煮えてきたら、メデイアはペリアスの娘たちをけしかけます。「何をぐずぐずしているの! 早く剣をとって、古い血を出してしまうの。空になった血管には、わたしが新しい薬汁の血を入れますから。父親の若返りは、あなたたちの手の中にあるの。あなたたちの望みが夢でないなら、剣で喉を裂きなさい」
とうとう、娘たちは思い思いに父親の体を切りつけます。しかし、父親を見ることができず、そっぽを向いています。そのため、かえって死に切れない父親を苦しめたのです。「何をするのだ、娘たち? どうして父を殺そうとするのか?」
メデイアはそんなペリアスの喉を切って、熱くなった釜の中へ放り込みます。もちろん、ペリアスが若返って生き返ることはありません。すぐさまメデイアは逃亡したのです。
メデイア