- 迫る婚礼の日。イピスと母テレトゥーサは苦悩します。
- イピスと母テレトゥーサ、イシスの祭壇に願う。
- イシスは前兆をあらわし、イピスの願いは果たしてかなうのか!
※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。
迫る婚礼の日
イピスは苦悩します。「ここには花婿はいない、2人とも花嫁なのです」
いっぽう、イアンテの想いは、もうイピスと結ばれることに恋い焦がれています。
イピスの母テレトゥーサは、あらゆる前兆や夢見、体調が悪いと言っては口実にして、婚礼の日のことを避けてきました。しかし、もう嘘の口実が尽きてしまったのです。
とうとう、運命の日、婚礼の日まで余すところ、1日になってしまいました。
イピスと母テレトゥーサ、イシスに願う
母テレトゥーサとイピス、イシスに願う
イピスと母テレトゥーサは髪も衣服も乱れたまま、イシスの祭壇に助けを求めました。
「七つの河口に分かれているナイル河を守られているイシス様、なにとぞ、お助けを。どうか、わたしたちの不安をいやしてくださいますように。
何もかも、わたしの寝室にお越しいただいたことを覚えております。お供の方々、楽のひびき、「がらがら」の音などなど。イシス様のお言葉どおり、この子イピスを育ててまいりました。どうぞ、わたしたちをお哀れみくださり、ご援助くださいますように」
すると、祭壇がゆれ動き、女神の月の形をした飾りがきらめいて、「がらがら」が響きの良い音を出しました。
イピスと母テレトゥーサの不安は消えていませんでしたが、めでたい前兆に神殿を出ることにしました。
イピスの願いがかなうのか?
母テレトゥーサの後をついていくイピス。
その歩幅が広くなり、顔色も浅黒くなってきました。体全体もたくましさを増し、顔つきも凛々しくなっています。女だった頃のか弱さはなくなり、力強さにあふれています。イピスは、いまや男になっていたのです。
母テレトゥーサは、そんなわが息子を見て、涙があふれてきました。そして、2人はたくさんの捧げ物を神殿に運んだのです。その銘文にはこう書かれていました。
女であったイピスが この品々を約束し
男となったそのイピスが いま これらを奉納する
婚礼の日
ウェヌス(アフロディテ)、ユノ(ヘラ)と、お供の婚礼の神々がやってきました。イピスは、とうとう肉体的にもイアンテをわがものとしたのです。