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このギリシャ・ローマ神話3つのポイント
  1. 父リグドスの願い「男の子であってほしい。女の子なら…」
  2. イピスは女に生まれ、男としてりっぱに成人しました。
  3. 結婚日が迫り、苦悩するイピス
    ※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。

父の願い「男の子であってほしい」

クレタ島のクノッソスの都に近いパエストスという地に、リグドスとテレトゥーサの夫妻が住んでいました。夫妻は裕福ではなかったため、夫は妊娠している妻に涙を流しながらこう言いました。

「わたしが願っていることは、2つ。安産であることと、男の子が欲しいということ。もし、女の子ならわが家には重荷になるので、育てることはやめにする。父親としては申し訳ないと思っている」

妻のテレトゥーサは泣きながら、たとえ女の子でも育てたいと訴えました。しかし、リグドスの決心は変わりません。

テレトゥーサとイシスの神々テレトゥーサとイシスとエジプトの神々

お腹も大きくなったある日、テレトゥーサはエジプトの女神イシス夢を見ました。後ろには、犬の頭のアヌビス神、尊いブバスティス神、牛神アピス、声を出さないよう口を押さえている沈黙の神ハルポクラテスも控えていました。

神々は聖なる「がらがら」も持参していて、催眠の毒を体いっぱいに蓄えたエジプトの蛇もいました。

「信者テレトゥーサよ、厄介な悩みは捨てるのです。夫に従う必要はありません。生まれた子は、どちらでも安心して育てるように」。女神イシスはこう話すと、部屋を出ていきました。

イピスは女に生まれ、男として成人

テレトゥーサは女の子を生みましたが、夫リグドスには男の子だと嘘を言いました。夫は感謝し、祖父の名と同じ「イピス」と名付けました。

テレトゥーサは喜びました。なぜなら「イピス」という名前は、男の子にも女の子にも使われ、名前では嘘にならないからです。イピスの顔立ちは、男女どちらにも見えるような可愛い子に育っていきました。

しかし、父親はイピスが13歳になったとき、イアンテという少女と婚約させました。イピスとイアンテはもともと幼馴染で、自然とお互いを愛し合うようになってもいました。

結婚が迫り、苦悩するイピス

イアンテは結婚の日を待ち望んでいます。しかし、イピスには愛する女性を自分のものにできない絶望があります。

「自然界では、メスがメスを愛することはない。牡牛は牝牛を、牡羊は牝羊を追いかける。

このクレタ島では不自然なことが起こる。ミノス王の妃パシパエ様は牡牛に恋をして受け入れ、あの怪物ミノタウロスを生んだ。しかし、曲がりなりにも、牡牛はお・と・こ。

ああ、あのラビリンスを造ったダイダロスがいたら。いや、彼でさえ、女を男にはできはしない。

わたしの願いは、父の願いでもあり、イアンテの願いでもある。待ちに待った婚礼の日はもう目の前、イアンテはわたしのものになろう。だが、自然だけはそうはいかない。それがわたしを苦しめる。

婚礼の女神さま、なぜこの婚礼においでになるのです。ここには花婿はいない、2人とも花嫁なのです」