- アルゴー船の帰還を祝うギリシャ・テッサリアの住民たち
- イアソンはメデイアに父アイソンの延命を願う「わたしの寿命を削って、父アイソンの方に」
- メデイアは竜の車に乗り、若返りの薬汁の材料を探しに出かけます。
※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。
アルゴー船の帰還を祝う乗員の親たち
「アルゴー船の出発」帰還も同じよう?
イアソン率いるアルゴー船が、無事「金羊毛皮」を奪還して、テッサリアのイオルコスに帰ってきました。乗員アルゴナウタイの老いた母や父たちは神々に感謝し、祭壇には供物や犠牲獣が捧げられました。
しかしその群衆の中には、イアソンの父アイソンはいません。彼は歳をとりすぎて、死の日も近かったからです。
イアソン「わたしの寿命を削って、父アイソンに」
イアソンは今にも泣き出すかのように、メデイアに頼みます。「妻よ、こうして戻ってこれたのは、おまえのおかげだ。おまえの魔力は信じがたいほどである。もし、できるならわたしの寿命の少しを削って、父親の方に回してもらえないだろうか。お前には、できないことはないと思う」
メデイアの胸には父アイエテス王のことが思い出されましたが、別に愛情があったからではありません。イアソンの悲しみをなくそうとこう答えました。「なんという罪なことをお思いなのですか。あなたの寿命を他の人に移すことなど、女神ヘカテ様がお許しにならないでしょう。
しかし、もっと良い方法を試みてみます。あなたの寿命は縮めずに、わたしの術をもってアイソン様を若返らせてみせましょう。願わくば、ヘカテ様のご好意とご加護がありますように」
メデイア、竜の車に乗り薬草を探しに
竜の車に乗るメデイア
真夜中、メデイアはこっそり家を出ると、星々に手をさしのべます。それから三度身をめぐらせ、三度髪に水をかけ、ひざまずいて祈ります。
「夜よ、このうえもない秘儀の友よ、月の神よ、三つの顔持つ女神ヘカテよ、術者たちに薬草を授ける大地よ、森に住む神々よ。あなたがたは、わたしのために、雄牛たちが吐く火炎を弱め、重荷を負ったことのないその頭に軛(くびき)をつけて、竜の歯から生まれた者たちに、同志討ちをさせてもくださいました。
そして、眠りを知らぬ竜を眠らせ、金羊毛皮をギリシアにもたらしてもくださったのです。
さあ、いま必要なのは、薬汁です。老年が若返って盛りをとりもどし、過ぎ去った若い日をとりもどすという、あの薬汁なのです。でも、きっとそれも与えていただけましょう。
ほら、そこへ姿を現わした翼もつ竜たちの車も、わたしを助けようとのお心からでありましょう」
メデイアのもとへ竜の車が空から降りてきました。魔女はそれに乗りこみ、竜の首をなで、手綱をとると、空高く舞いあがりました。テッサリアの峡谷を眼下にながめ、メデイアは薬草を探しにここぞとおもう地域へと向かったのです。