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このギリシャ・ローマ神話3つのポイント
  1. 女神ケレス(デメテル)の命令で[飢餓]動き出す
  2. 娘ムネストラ、海神ネプトゥヌス(ポセイドン)に願う
  3. 財産を食いつぶし、娘ムネストラまで売った父エリュシクトンの飢餓
    ※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。

女神ケレスの命令で[飢餓]動き出す

[飢餓]は豊穣の女神ケレス(デメテル)の命令には従い、夜にエリュシクトンの部屋にやってきました。

「飢え」を体の中へふきつけ、「空腹」を血管の中に送りこみます。[飢餓]は女神の命令をはたすと、自分の住処「欠乏」へと帰っていきました。

夢の中で、エリュシクトンはあまりの食欲の強さに目覚めると、家にある食べ物をすべて平らげました。それでも、空腹は満たされません。召使に命じて、海の幸、山の幸、空の幸とあらゆる食べ物を取り寄せさせます。

もはや、エリュシクトンの口は食べれば食べるほど、食欲が増してくるのです。とうとう、召使、自分の家まで手ばなす羽目になりました。すべての財産を食べ尽くしてしまったのです。残ったのは、娘ムネストラだけです。その娘まで、彼は奴隷商人に売りとばしてしまいました。

娘ムネストラ、ネプトゥヌスに願う

娘ムネストラを売るエリュシクトン娘ムネストラを売るエリュシクトン

エリュシクトンの娘ムネストラは、売られた家から逃げて海辺にやってくると、海に手をさしのべ願いました。「わたしをお救いください。わたしの純血を奪った神様!」。神とは、海神ネプトゥヌス(ポセイドン)です。

海神ムネストラの願いを聞き入れ、彼女を男の釣り人に変身させました。追ってきた主人は、変身した釣り人に尋ねます。

「今日は釣りをするのは良い天気でございます。たくさん釣れるといいですね。ところで、一つお尋ねします。今しがた、この浜辺でみすぼらしい娘を見かけませんでしたか? この辺で娘の足跡も消えているのですが……」

ムネストラは少し愉快になり、こう答えました。「どなたかご存知ありませんが、わしは釣りに集中していましたので、そのような娘には気付きませなんだ。申し訳ない。早く見つかるといいですね」

主人は訳がわからないといった顔をしながら、来た道を戻っていきました。ムネストラは元の姿の戻ると、父のいる場所に帰っていきました。

海神ネプトゥヌス(ポセイドン)と男に変身したムネストラ海神ネプトゥヌスと男に変身したムネストラ

娘ムネストラを何度も売る

エリュシクトンは娘ムネストラに、どうして帰ってこれたのか事情を聞きました。娘の変身の能力を知ると、これ幸いとばかり娘を何度も奴隷商人に売りとばしたのです。もちろん、売ったお金はすべて、空腹を満たすことに使われました。

ムネストラは、何度も奴隷商人をだます父にあきれはてました。そして、帰ってくることはやめたのです

しかし、エリュシクトンの「飢餓」はますます強くなり、ついに自分の手足まで食べてしまうのです。その後、彼がどうなったのかわかりません。また、彼の姿を見たものもいないということです。

「あなたが罰せられる日は、近いのです。それが、せめてものわたしの慰めです」と、樫の木の精がエリュシクトンに言った予言は、成就されたのです。