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このギリシャ・ローマ神話3つのポイント
  1. 豊穣の女神ケレス(デメテル)の巨大な樫の木
  2. 樫の木を切り倒す不信心のエリュシクトン
  3. 豊穣の女神、エリュシクトンに[飢餓]の罰をあたえる
    ※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。

女神ケレスの巨大な樫の木

エリュシクトンは、神に敬意を払わない男で、祭壇に香をたくこともありません。そんな彼は、豊穣の女神ケレス(デメテル)の森をけがしたのです。

この森には、その森全体を見おろすほどの巨大な樫の木が天高くそびえていました。しめ飾りや記念の額や花輪が飾られ、誰が見ても、聖なる木だとすぐわかりました。この木のまわりでは、妖精たちが舞いおどったりもします。

樫の木

樫の大木をきりたおすエリュシクトン

この聖なる樫の木を切り倒すように、エリュシクトンは召使たちに命じました。しかし、召使たちは恐れおののき、木に斧を入れることができません。すると、エリュシクトンは斧を取りあげると、高々と振りあげました。

エリュシクトンは「この木が女神の愛する木だとしても、女神自身であったとしても、大地に倒れるだろう」と言うなり、斧を振り下ろしました。樫の木は樹皮から大量の血を流し、うち震え、呻き声を発しました。

召使たちは仰天しました。その中の1人が勇気を出して、エリュシクトンを止めようとします。彼はその男をにらむと「おまえの信心のほうびを受けとるがいい!」と、その男の首を切り落としたのです。その後、樫の木に何度もなん度も切りつけました。

すると、樫の木の中から声が聞こえてきました。「わたしは豊穣の女神様から深い愛を受けているこの木の精です。死ぬ前にあなたに予言をします。あなたが罰せられる日は、近いのです。それが、せめてものわたしの慰めです」

さらに、樫の木に斧を入れるエリュシクトン。とうとう、巨大な樫の木はど〜んと倒れたのです。

豊穣の女神、エリュシクトンに飢餓の罰を

[飢餓]イメージ(餓鬼草紙)[飢餓]イメージ(餓鬼草紙より)

森の精たちは、豊穣の女神ケレス(デメテル)にエリュシクトンに罰を与えるよう訴えました。女神は、[飢餓]によって彼を罰しようと決めました。しかし、[豊穣]の女神は、定めで[飢餓]に近づくことはできません。

女神はオレイアス(山妖精)を呼んで、こう言いました。「凍りついたスキュティアの果てに、不毛の地があります。そこには、[寒冷][蒼白][戦慄]そして[飢餓]が住んでいます。この[飢餓]に命じておくれ。あのエリュシクトンの腹の中に入って、わたし[豊穣]にも負けないで勝利するように」と。

女神は自分の竜車をオレイアスに与えると、山妖精はスキュティアへと出立しました。

石ころだらけの野原に、[飢餓]はいました。髪はぼうぼうで、目は落ちくぼみ、顔面は蒼白です。体と手足はガリガリに痩せて、骨と干からびた内臓が透けて見えます。

オレイアスは近づくのがためらわれ、遠くから豊穣の女神ケレスの命令を伝えました。そして、すぐに竜車に乗って帰ります。少しいるだけで、早くも飢えをおぼえたからです。

[飢餓]は豊穣の女神とは敵対関係にありますが、女神の命令には従い、エリュシクトンに罰を与えるべく動き出しました。