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このギリシャ・ローマ神話3つのポイント
  1. キュクノスと同じ不死身な体を持ったカイネウス
  2. 海神ネプトゥヌス(ポセイドン)の暴力
  3. 女カイニスから男カイネウスへ
    ※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。

キュクノスを倒したアキレウスは、女神ミネルウァ(アテナ)に雌牛を捧げました。牛の贓物を燃える祭壇に載せると、神が好む香りが天高く登っていきました。肉の一部は供儀のためですが、残りは将たちの食膳に供されます。

将たちは長椅子にもたれかかり、肉とワインを楽しんでいました。戦場ですから他に楽しみはなく、お互いの武勇を語りあうことぐらいです。もっぱらアキレウスが倒したキュクノスの体がなぜ剣も槍も通さなかったのか、不思議がります。

アキレウスも不思議に思っていたのです。その時、老雄ネストルが話はじめました。

キュクノスと同じ不死身な体を持ったカイネウス

「今の時代ではキュクノスだけであったが、わたしはかつてテッサリア生まれのカイネウスという男に出会ったことがあった。この男も、やはり剣や槍では、体を傷つけられることはなかった。その勲(いさおし)は知れ渡っていたが、なんとこの男は生まれた時は女であったという。不思議な話なのだ」

一同はみんな驚きました。そんな中、アキレウスが老雄ネストルに尋ねます。
「さあ、話してください。みんなが聞きたいという顔をしています。そのカイネウスという男は、何者だったのですか。どうして女として生まれたのに、男になったのですか?」

老雄ネストルは、話はじめました。
「私はすでに200年も生きているので、普通ならもう3人目の生涯に入っていることになる。耄碌し、いろいろ忘れることが多いが、あのことははっきり覚えているのだ」

海神ネプトゥヌス(ポセイドン)の暴力

ポセイドンの求愛を受けるカイニスネプトゥヌスの求愛を受けるカイニス

老雄ネストルの話。
「さて、エトラスの娘カイニスは、テッサリアでも一番美しい娘であった。多くの求婚者がいたが、誰もその望みをかなえられなかった。アキレウスよ、そなたの父ペレウス殿だって求婚したかったであろう。しかし、その時すでに父上はテティスと結婚していたか、婚約していたのであろう。何と言っても、カイニスはあなたと同国人であったのだから」

ある日、カイニスは海神ネプトゥヌス(ポセイドン)の暴力にあった。海神は満足すると、こう言ったという。
『お前の願いはすべてかなえられよう。望みのことを言うがよい』
カイニスはこう答えたと言う。
『こんなひどい目にあった私は切に願うことがあります。2度とこんな目に会いたくはありません。どうか、わたしを女でなくしてください。これがかなえられれば、本望です』

女カイニスから男カイネウスへ

こう答えるカイニスの声だがな、はじめは娘の声であったが、だんだん太い声になっていき、最後の方では男の声であったという。

海神ネプトゥヌスは、即座にカイニスの願いを叶えていたのだ。さらに、こんな恵身をも与えていたのだ。いかなる傷も受けず、刃物では殺されて死ぬこともない、とな。

カイニスは男となってカイネウスになり、喜んでこの海岸を去っていったということだ」

アキレウスをはじめ、一同は老ネストルの話に聞きいっていました。カイネウスの最後は、次の『ラピタイ族とケンタウロスの戦い』の最後でふれます。