- 王家の娘コロニスは、海神ネプトゥヌス(ポセイドン)から逃げました。助けを求めた彼女の願いを聞きいれたのが女神ミネルウァ(アテナ)。コロニスは小カラスに変身しました。
- ミネルウァは赤ん坊を箱に入れて、アテナイの初代王ケクロプスの3人の娘にあずけました。その時「けっして中を見てはならぬ」と、禁じました。
- 娘の1人アグラウロスは姉妹に「臆病者!」と言って、禁じられた箱を開けてしまったのです。それを見ていた小カラスは、そのことをミネルウァに伝えました。その結果……
※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。
ポーキスの王コロネウスの娘コロニス
コロニスという同名ですが、アポロンの愛人、医術の神アスクレピオスの母とは別人です。この王家の娘コロニスは、その美しさからたくさんの求婚者がいました。
ある日、コロニスが海岸を歩いていると、海神ネプトゥヌス(ポセイドン)に見初められました。コロニスは海神の口説きから逃げだしましたが、砂地を走ることで疲れてしまいました。ネプトゥヌスは迫ってきます。もう、助けを呼ぶしかありません。
しかし、コロニスの叫び声は、神も人間も誰ひとり気づくことはなかったのです。女神ミネルウァ(アテナ)を除いては。女神は自分と同じような処女であるコロニスをあわれみ、助けようとします。
コロニスは、天に手を伸ばしました。すると、その手は軽い羽毛となり黒く変わっていきました。衣服も羽毛となって、体をおおっていきます。走っていたのですが、もはや砂地は感じられません。体が浮いていたのです。さらに天高く舞い上がり、こうしてコロニスは小カラスとなり、女神ミネルウァのお供の鳥となったのです。
フクロウよりも下位に落とされた小カラス
ケクロプスの3人の娘とエレクトニオス
ある日、女神ミネルウァ(アテナ)は母親なしで生まれた赤ん坊を箱に入れ、アテナイの初代の王ケクロプスの3人の娘にあずけました。パンドロソス、ヘルセ、アグラウロスです。その時、ミネルウァは「けっして、箱の中を見てはいけません」と禁じたのです。
パンドロソスとヘルセは、ミネルウァの言葉を守りました。しかし、アグラウロスは姉妹に「臆病者!」と言って、箱を開けてしまったのです。中には、下半身が蛇の赤ん坊エリクトニオスがいました。
その一部始終を見ていた小カラスは、そのことをミネルウァに伝えたのです。
褒めてもらえると思っていた小カラスは、その思いに反してミネルウァの保護を失いました。フクロウよりも、下位の地位に落とされたのです。それで、ミネルウァの愛鳥といえば、フクロウになったのです。
余談になりますが、小カラスは自分のことがあったので、まだ白かったカラスに「告げ口は禍の元ですよ」と助言していたのです。しかし、白いカラスはそのことを無視して、アポロン神にコロニスの不貞を伝え、黒いカラスにされたのです。
※命令を守らなかったケクロプスの3人の娘は、ミネルウァに気を狂わされたとも、殺されてとも言われています。
アグラウロスについては↓↓↓を参照
【真っ黒な石に変身したケクロプスの娘アグラウロス】
【エリクトニオス】
女神ミネルウァは鍛冶の神ウルカヌス(ヘパイストス)の工房に武器を鍛えてもらおうとやってきました。その頃、ウルカヌスは妻ウェヌス(アフロディテ)から相手にされなくなっていました。彼はミネルウァに欲情して迫りました。
しかし、女神は拒んで逃げ、ウルカヌスはびっこの足で女神を追います。そして、ウルカヌスは女神の足に射精してしまったのです。
女神が精液を羊毛でふきとって大地に捨てると、大地から赤ん坊エリクトニオスが生まれました。