- 大神ユピテル(ゼウス)は、はじめ雷ていで人類を滅ぼすことにしました。しかし、雷ていによる火が、全宇宙を破壊しないとも限りません。
- そこで、ユピテルは水によって人類を滅ぼすことにします。
- ユピテルは雨を降らす南風を呼び、海神ネプトゥヌス(ポセイドン)も要請。ネプトゥヌスは、あらゆる河川に水の堰(せき)をきらせます。
※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。
雷電を落とすことから水による大洪水へ
大神ユピテル(ゼウス)は、はじめ雷電で人間を滅ぼすつもりでいました。しかし、雷電による大火事がおきると、天界の神々の宮殿を燃やし、それが全宇宙の破壊を引き起こしかねません。
そこで、人類をを洪水で滅ぼすことにしました。世界が水におおわれるだけなら、天界は安全だからです。
ユピテル、大雨をふらす南風を呼ぶ
ユピテル(ゼウス)は、はじめにかわいた北風や東風、西風を風の神アイオロスの洞くつにとじこめました。そのあと、ぬれた翼をもった南風をよびました。
南風のヒゲは雨でぬれ、白い髪の毛からは水がしたたっています。南風は空いっぱいに黒い雲をひろげ、手でおさえるとパーンと大きな音がしました。すると、空からはどっと大雨が降ってきました。虹の女神イリスは、なんども雲に水をはこびました。
こうして、地上はどんどん水におおわれていきます。
ユピテルに手をかす海神ネプトゥヌス
海神ネプトゥヌス
ユピテル(ゼウス)の兄の海神ネプトゥヌス(ポセイドン)はすべての河川の神をあつめ「すべての水をときはなち、力いっぱい流れのだ!」と、命じました。すると、河川は森や平原のいたるところを勢いよく流れ、海に達します。
ネプトゥヌス自身も、三叉槍で大地をたたきます。大地はゆれうごき、裂けめからは水が天たかく吹きあがります。水は地上に落ちてくると、森や畑、牛や羊、人間や家も水の中に沈んでしまいます。
とうとう、木や高い建物も水の下になり、イルカや魚がその上を泳ぐようになりました。もはや、海に岸辺は見あたりません。
とうとう滅びてしまった人類…
大洪水のはじめは、船に乗っている人や高い山にいた人は生きていました。しかし、地表がすべて水におおわれると、食べるものがなくなり、人間は飢えで苦しみます。
こうして、人類は滅んでしまったのです。
しかし、未来が見える兄プロメテウスの子デウカリオンと弟エピメテウスの娘ピュラの夫婦だけは、高いパルナッソス山に逃げていたのです。