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このギリシャ・ローマ神話3つのポイント
  1. テセウスとペイリトオス一行と河神アケロオス
  2. デイアネイラをめぐるヘラクレスとアケロオスの戦い
  3. 雄牛となったアケロオスの右の角を折るヘラクレス
    ※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。

テセウス一行と河神アケロオス

テセウス一行をもてなす河神アケロオステセウス一行をもてなす河神アケロオス

カリュドンの猪退治の後、テセウスとペイリトオスたちはアテナイへと帰ります。途中、雨で増水したアケロオス河が行く手をさえぎっていました。

河神は彼らに呼びかけます。「名だたるテセウス殿、わたしの住まいで水が引くまでお休みなさい」。テセウスはうなずいて答えます。「アケロオス殿、ご好意にあまえて、あなたの住まいをお借りしましょう」

こうして、テセウス一行と河神アケロオスは、宴を共に楽しむことになりました。

会話は『バウキスとピレモン』『エリュシクトン』の話などなど、尽きることなく続きました。しばらくして、テセウスは河神に尋ねました。「ところで、アケロオス殿、あなたの右の角がないのは、どうしてなのですか?」

河神アケロオスは、恥いることももなく淡々と語り始めました。

デイアネイラをめぐるヘラクレスとの戦い

「面白くもないお頼みですが……。ヘラクレスに敗れたてんまつをお話しましょう。オイネウスの美しい娘デイアネイラをご存知でしょうか? 多くの求婚者がいました。その1人にわたしも入っていました。そして、あのユピテル(ゼウス)の子ヘラクレスも求婚者になったのです。

他の求婚者は、みなわたしとヘラクレスに遠慮して去っていきました。

ヘラクレスはこうオイネウスにアピールしました。『わたしはユピテル(ゼウス)の子で、多くの難行もこなしてきました。継母ユノ(ヘラ)の命令をやり遂げたのです』と。

わたしは、こう主張しました。『神が人間ヘラクレスに負けるのは恥ずべきこと。また、わたしはあなたの支配する国を流れています。よそ者ではないのです』と。

その後、ヘラクレスにはこう反論したのです。『ユピテルが本当の父であるはずがない。もしそうなら、あなたの母アルクメネは、不義の子を産んだことになる。だから、ユピテルを父と言うなら、ウソか不名誉な子になる』と」

雄牛となったアケロオスの右の角を折るヘラクレス

ヘラクレスとアケロオス(雄牛)の戦いヘラクレスとアケロオス(雄牛)の戦い

「ヘラクレスは怒って『おれの得意技は、舌ではなく腕だ。だから、口で負けても気にしない』と言うと、猛然と襲いかかってきたのです。わたしはひくに引けず、戦闘開始に備えました。

わたしの体の方が大きかったので、最初はなんとか持ちこたえていました。が、背中に乗っかられると、ヘラクレスは山のようにずっしりと感じられました。息も絶え絶えになったわたしは、ついに膝をついてしまったのです。

とうとう、わたしは自分の得意技を出しました。大蛇に変身したのです。しかし、ヘラクレスは笑っているではありませんか!

『蛇退治など、赤ん坊の頃からやってる。また、レルネの水蛇も倒しているのだ。頭が8つもあって、1つ切り落とすと2つの頭が出てくるのだぞ!』と言うと、ヘラクレスはわたしの喉を押してきたのです。その苦しいこと!

次に、わたしは雄牛に変身しました。すると、ヘラクレスはまた笑っているのです。『ネメアの獅子を退治したのはわたしだ』と言うと、後ろから角を2本つかみ、地面に押し倒してきたのです。その時、右の角がぽきりと折れたのです。

今ではこの角は、水の精たちが果物や花をいっぱい盛って、豊饒の女神に捧げているのです。

まあ、わたしの完敗で、デイアネイラはヘラクレスの妻になりました。しかし今では、わたしは彼と戦えたことを誇りに思っています」

こんな話をしているうちに、河の水は引いていきました。テセウスとペイリトオス一行は、アケロオスの住みかを辞していきました。