- ネッソスの復讐がかない、ヘラクレスは最後をむかえます。
- ユピテル(ゼウス)は満足して「ヘラクレスの神格化」を神々に宣言
- 神に迎えられるヘラクレス、長年憎んできたユピテルの妃ユノ(ヘラ)もついに容認
※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。
死をむかえるヘラクレス
ネッソスの復讐の布—ヒュドラの毒により覚悟を決めたヘラクレス。オイタの山に入り木を切り倒し、自分の火葬場を積み上げます。彼は積み上げた火葬場の一番上にネメアの獅子の皮をしき、棍棒を枕にして体を横たえます。
その後、ヘラクレスは弓と矢筒をポイアスの子ピロクテテスにゆずり渡すと、彼に火を付けさせました。炎は勢いよく燃え上がります。だが、ヘラクレスはあばれることもなく、静かに横たわっています。
この後、ピロクテテスは、トロイア戦争で重要な役割を担います。
火葬されるヘラクレス
ユピテル満足して、神々に宣言する
オリュンポスの神々は、ヘラクレスのことを気にかけて見守っています。そんな神々の心にユピテル(ゼウス)は、嬉しさから話しはじめました。
「神々よ、諸君の気づかいは、わたしには喜びだ。わたしの息子ヘラクレスが好意を受けているということを、とてもありがたく思っている。彼の功績は、人間界にあってそれほど群を抜いていた。
しかし、諸君、そんなヘラクレスを悲しまないでほしい。彼はあの火炎にも打ち勝つからだ。炎によって焼き尽くされるのは、母アルクメネから譲り受けた人間の部分だけ。つもり、わたしから受け継いだものは、死とは無縁であり、永遠に不滅なのだ。
今、ヘラクレスは人間としての務めを終えたからには、わたしは彼を天上界に迎えようと思う。諸君も喜んでくれると思う。
だが、ヘラクレスが神になることを、ひょっとして誰かがそれを面白く思わないかもしれない。しかし、彼にはそれがふさわしいもので、与えられるべくして与えられたものであるとして、不本意ながらも賛成するだろう」
そう語ったユピテルは、ちらとユノ(ヘラ)の方を見たのです。
神に迎えられるヘラクレス、ユノも容認
ユノ(ヘラ)は、ヘラクレスが神になることを容認しました。しかし、自分に向けられた夫ユピテル(ゼウス)の最後の言葉には、渋い顔をせざるをえませんでした。
ユピテルが話し終えるころには、ヘラクレスの人間の部分がすべて焼き尽くされました。もはや、ユピテルから受け継いだ神としてのヘラクレスが、新たに輝きをましてよみがえったのです。
そんなヘラクレスをユピテルは馬車を遣わし、天界に導いたのです。このとき、天球を支えているアトラスは、ヘラクレスの重さが加わったことをその肩に感じました。
こうして、ヘラクレスは神となったのです。しかし、人間界でヘラクレスに10の難行を与えたエウリュステウスだけは怒りを持ちつづけ、ヘラクレスの子供にその憎しみを向けていたのです。
ヘラクレス、神になる