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このギリシャ・ローマ神話3つのポイント
  1. アテナイの使者ケパロスの美しい槍の木は、なんの木でできている?
  2. ケパロスの悲しい思い出「この槍が、わたしと愛する妻を滅したのです」
  3. 曙の女神アウロラ(エオス)、ケパロスを連れ去る。生まれるケパロスの猜疑心
    ※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。

ケパロスの槍の木は、なんの木でできている?

アイアコス王の末子ポコスは、アテナイの使者ケパロスに尋ねました。

「わたしは狩猟が好きなのですが、ケパロス殿がお持ちの美しい槍の木はなんの木でできているのですか? トネリコの木のように茶色ではないし、山ぼうしなら、節があるはずですね」

ケパロスは答えました。「驚かれましたか。しかし、この槍は美しさより、その力にはもっと驚かれるでしょう。なぜなら、狙った的は絶対に外しません。それだけではなく、誰が投げ返すわけでもなく、槍が投げた者に自然に戻ってくるのです」

ポコスは、もう聞きたいことが山ほどあるような顔になっています。どこから手に入れたのか? 誰に作ってもらったのか? あるいは誰が贈ってくれたのか?

この槍が、わたしと愛する妻を滅したのです

曙の女神アウロラ(エオス)曙の女神アウロラ(エオス)

ケパロスは、ポコスに話し続けます。

「この槍がわたしの涙を誘うのです」と、涙ぐんだケパロス。「この槍が、わたしと愛する妻を滅したのです。こんな槍など、なかった方がどんなに良かったことか!

妻は、あの北風の神ボレアスに連れ去られたオレイテュイアの姉プロクリスです。わたしは幸運にも、エレクテウス王の美しいと評判の姉妹のひとりを妻にできたのです。

曙の女神アウロラ(エオス)の御心さえなければ、今も……わたしは幸せだったことでしょう」

曙の女神アウロラが生んだケパロスの猜疑心

ケパロスは、ポコスに話し続けます。

「新婚2ヶ月目のある日の朝方、曙の女神アウロラ(エオス)が狩の網をしかけているわたしを見つけ、連れ去りました。女神にはお許しをいただいて、はっきり言います。わたしは女神よりプロクリスの方を愛していました。女神のそばに使えていても、いつも妻のことを語っていたのです。

婚礼のこと、新床の閨(ねや)の妻との語らい、夫婦のちぎり……などなど。わたしは新婚で若かった頃ですから、自慢し話したかったのです。

さすがに、女神は気を悪くしました。『いつまで泣きごとを言っているのか、この恩知らず! なら、プロクリスのもとへ帰りなさい。でも、きっと帰ったことを後悔するでしょう』

帰る途中、女神の言葉がわたしの心に不安を生みました。妻が浮気をしているのではないか? そう思い始めたのです。あの美しさですから、夫がいなくなったら、きっと多くの男たちが妻を口説くでしょう。そんなことはないと否定しても、美しい曙の女神だって浮気をしたのです、このわたしと。

今思うとわたしは馬鹿なことを考えてしまったのです。『妻の操を試してみよう』と。わたしの疑う心と女神の力でしょうか? わたしは別人のような姿になっていました」