- 怒った女神ディアナ(アルテミス)がつかわした大猪退治に集まった英雄たち
- カリュドンの猪狩り。女神ディアナの妨害に手こずる
- メレアグロス、勝利のほまれ(大猪の頭部)をアタランタに捧げる
※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。
怒った女神ディアナがつかわした大猪
カリュドンの猪狩り
ある年の収穫祭、メレアグロスの父オイネウスは女神ディアナ(アルテミス)への捧げものを忘れました。
「軽んじられたことは良いとしても、その仕返しをしなかったとは言われたくない」と言って、女神は牛よりもはるかに巨大な猪をカリュドンに送りました。その剛毛は鋼のように、牙はアフリカ象のように大きかったのです。
大猪は口からは稲光を発し、吐く息は草木をも焼きつくします。作物は踏みつけられ、オリーブの木々もなぎ倒され、家畜、犬、羊飼いも殺されました。
ついに、オイネウスの子メレアグロスが猪狩りの仲間を募ります。すると、ギリシア全土から続々と勇士たちが集まりました。その数、総勢40名ほどです。
メレアグロスをはじめとし、スパルタからゼウスの息子カストルとポリュデウケス(ディオスクロイ、ヘレネとは二卵性双生児)、アルゴー船の遠征のイアソン、アテナイからはテセウスとその友ペイリトオス、リュンケウスと韋駄天のイダス、女から男に性転換した不死身のカイネウス、勇猛なレウキッポスと槍の名手アカストス。
プティアからアキレウスの父ペレウス、サラミスからオデユッセウスの父テラモン、ピュロスからトロイア戦争のアキレウスに次ぐ英雄の若きネストルなどなど、そして、紅一点の美しいアタランテ。
※大猪と言っても、絵画では通常の大きさより2倍、大きくても3倍の大きさです。また、神が遣わしたからといって、この猪一頭のために英雄がこれほど集まったのには「?」です。別に、国同士の思惑もありません。
カリュドンの猪狩りと女神ディアナの妨害
メレアグロスは、紅一点のアタランテをひと目見て、恋心を抱きました。「彼女の夫になる男は、どんなに幸せだろうか!」と、思っても口には出さず、狩に集中しました。
いよいよ、カリュドンの猪狩りが、始まりました!
エキオンが1番槍、2番槍はイアソンでしたが、2人とも外しました。次に「アポロン神よ、どうか的を外しませんように」と、モプソスが槍を投げます。槍は大猪に当たりましたが、傷つくことはありません。なぜなら、女神ディアナ(アルテミス)が、槍の穂先を抜いたからです。
今度は大猪が狩人たちに突進します。ピッパルモスとパラゴンがなぎ倒され、エナイシモスは致命傷を受けました。ネストルは、槍を地面に立て、それをクッションにして木にとびうつり難を逃れました。
カストルとポリュデウケスの槍は、大猪に刺さるかと思われましたが、その剛毛に遮られます。この後も、英雄たちが槍を投げるも、なかなか仕留めることはできません。
そして、紅一点のアタランテが、弓矢を放ちます。矢は耳の下をかすめ、わずかな血潮が流れました。メレアグロスはたいそう喜び「乙女よ、当然のことながら、武勇のほまれをお受けになるが良い!」と言いました。
その後、アンカイオスが「女神が阻もうと、俺がやつを仕留める!」と大言壮語して挑みましたが、逆に大猪の牙に殺されます。ペイリトオスも立ち向かおうとしましたが、友テセウスが「離れるのだ!」と言い槍を投げます。続いてイアソンもふたたび槍を投げましたが、どちらも的を外しました。
メレアグロス、勝利のほまれをアタランタに
猪の頭をアタランタに捧げるメレアグロス
いよいよ、メレアグロスが2本の槍を投げました。その1本が、みごと大猪の背の真ん中に刺さりました。大猪はぐるぐる回り暴れましたが、もう一度メレアグロスが槍を肩に深く押し込みます。
とうとう、大猪はどっと倒れました。このとき、なぜ女神ディアナ(アルテミス)は大猪をメレアグロスに倒させたのでしょうか。今までは、槍の穂先を取ってまで、大猪を守っていたのにです。
この後、メレアグロスは「乙女よ、この戦利品を受け取ってください。あなたが最初に血を流させたのですから」と言うと、アタランタに大猪の頭部を渡しました。彼女もこの贈り物を喜び、メレアグロスに好感を持ちました。
このことが、とんでもない災難をメレアグロスにもたらすことになります。ここに、人知を超えた女神ディアナの思惑があったのです。