- メレアグロスの叔父プレクシッポスとトクセウスの言いがかり
- メレアグロス出生の秘密
- アルタイアの葛藤と女神ディアナの思惑の成就
※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。
メレアグロスの叔父2人の言いがかり
メレアグロスがアタランタに大猪の頭部をわたす。なんとも不吉なレリーフ!
メレアグロスがアタランタに大猪の頭部をわたすと、メレアグロスの叔父プレクシッポスとトクセウスが言いがかりをつけました。
「さあ、返すのだ! 女のくせしてわれらのほまれを横取りしてはならん。美貌を鼻にかけても、恋に目がくらんだメレアグロスは、おまえの役には立たんぞ!」こう言うと、叔父たちは大猪の頭部を横どりしました。
メレアグロスは歯ぎしりしながら「他人のほまれの略奪者たち、思い知るがよい!」と、まずプレクシッポスの胸を剣で刺しました。トクセウスはぼうぜんとして、動くことができません。メレアグロスは、そんな彼をも殺してしまったのです。
メレアグロス出生の秘密
自分の兄弟2人が、息子に殺されたことも知らなかった母アルタイアは、神に勝利の捧げものをするべく神殿に向かっていました。
そんなアルタイアの前方に、2人の兄弟の遺体が運ばれていったのです。彼女は大きな叫び声をあげると、喪服に着がえました。しかし、殺したのが息子メレアグロスだとわかると、悲しみは消え報復のために、自宅に走って帰ったのです。
それは、メレアグロスの命の丸木が、自宅に隠してあったからです。
メレアグロスが生まれたとき、運命の女神たちが1本の丸木を火に投げ込んで言いました。「みどり児よ、この丸木とおまえに同じだけの寿命を与えよう!」
母アルタイアは急いで燃えている丸木を取り出し、水をかけずっと隠してきたのです。
アルタイアの葛藤と女神ディアナの思惑の成就
家に帰ったアルタイアは、メレアグロスの命の丸木を取り出すと、今にも祭壇の火の中に投げようとしました。
しかし、できません。「母親」としての思いが顔面を蒼白にさせたのです。その後すぐさま、「姉妹」としての思いが怒りで、顔を真っ赤に染めるのです。ためらうこと4回にも及びました。
「オイネウスのほうは、息子メレアグロスの勝利を喜んでいる。一方、わたしの父テスティオスは息子2人を奪われ悲しみに沈んでいる。ふたりともに悲しむのが、平等というものでは?
あの子は勝ち誇り、このカリュドンを支配する? それは我慢ならない。だが、母親の情はどこへいく? 十月のあいだ耐えたあの苦しみは? ああ、あのとき、丸木を燃えるままにしておけばよかったのだ。
ああ、子を思う母の情に、心がくじける。かといって、兄弟たちの死にざまが目に浮かぶ……、やはり兄弟の情が勝たなければ。息子が死んだあと、わたしも死のう」
アルタイアは、メレアグロスの命の丸木を祭壇の炎に投げ入れました。遠くにいた彼は、体の内から焼かれる苦しみに、英雄らしく取り乱すこともなく死んでいきます。しかし、父の名、兄弟姉妹の名、そして母の名を息たえだえの中で呼びました。
メレアグロスの命の丸木を燃やすアルタイア
その日の夕方、カリュドンの街は悲しみに沈みました。メレアグロスの父オイネウスは大地に伏して、自分の長い寿命を呪いました。母アルタイアは自分の所業の恐ろしさに、刃で胸を刺しました。
こうして、女神ディアナ(アルテミス)は、オイネウス一族の破滅に満足したのです。
オイネウスの娘たちはヘラクレスの妻となったデイアネイラとゴルゲを除き、女神によってクチバシや羽毛を生じ、手は翼となり、大空へと飛び立ったといいます。