- なぜ、ダイダロスはクレタ島をさったのか?
- ダイダロス、親鳥のように息子イカロスを気づかう
- イカロスの墜落(イカリア島)とダイダロスはシケリアへ
※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。
なぜ、ダイダロスはクレタ島をさったのか?
クレタ島の怪物ミノタウロスを閉じ込めたラビリンスを設計したダイダロス。テセウスとアリアドネが逃亡したことに加担したとして、ミノス王は彼を息子イカロスとともにラビリンス(迷宮)に閉じ込めました。
このラビリンスは設計したダイダロスさえ、脱出することはできなかったのです。
また、たとえラビリンスを脱出できたとしても、ミノス王の海軍と陸軍を突破することはできません。しかし、ダイダロスは「たとえ、陸と海から逃げ出せなくても、空がある」と決意しました。
ダイダロスはさっそく大小の鳥の羽を多く集めると、翼を作りました。作った翼を身につけると、自分で飛んでみました。うまく飛べると、今度はイカロスの翼をつくりました。
ダイダロス、親鳥のように息子イカロスを気づかう
準備がととのうと、ダイダロスはイカロスに飛ぶ注意をしました。「イカルスよ、あまり高く飛んではいけない。なぜなら、太陽の熱で羽をつけているロウが溶けてしまうからだ。また、あまり海面近くを飛んでもいけない。翼が水の湿気で重くなってしまうからだ」
「よいか、わしの後をしっかりついてくるのだぞ」と、ダイダロスはイカロスに注意し、ラビリンスを飛び立ったのです。
ダイダロスはイカロスが無事ついてきているか、何度も何度もふりむいて確認します。まるで、親鳥がひな鳥の初飛行を気づかっているかのようです。
飛んでいる2人を見あげてびっくり仰天したのは、農夫、漁師、羊飼いたち。飛ぶことができるのは、神々や天使に違いないと思ったからです。
ダイダロスとイカロスを見上げる農夫や漁師
イカロスの墜落。ダイダロスはシケリアへ
ダイダロスの不可解な飛行経路
ダイダロスとイカロスは、こうしてラビリンスから逃亡したのです。しかし、クレタ島から、バロス島、デロス島をへて、ある島の上空にきたとき、異変が起きました。
イカロスは、飛んでいることが楽しく夢中になってしまったのです。彼は父の注意を忘れて、どんどん高く高くのぼっていったのです。
すると、翼のロウが溶けはじめ、羽がバラバラになってきました。もはや、子供の重さとはいえ支えることはできません。ついに、イカロスは墜落します。最後に「お父さ〜ん」と叫んだのですが、父には届きません。
ダイダロスが気づいて振りかえった時には、イカロスの姿はどこにもありません。「イカロス〜、どこにいるのだ」。とうとう、ある島の近くで、死んでいる息子を見つけたのです。
ダイダロスは、その島に息子を埋葬しました。その島は、イカロスにちなんでイカリア島とよばれます。
父が子を埋葬している時、ずんぐりした鳥が喝采するかのように翼をふり、喜んでさえずっていました。その鳥の正体については、次回お話します。
その後、ダイダロスは真西に進路をとり、ギリシャのペロポネソス半島を通過し、イタリアのシケリアに行ったのです。なぜ、今までの方向を大きく変えてしまったのかは、謎です。
イカロスの墜落