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このギリシャ・ローマ神話3つのポイント
  1. アポロン神に今後のことを相談する追放の身カドモス。彼は、白い牛になったユピテル(ゼウス)に誘拐されたエウロペの兄です。
  2. 軍神マルス(アレス)のドラゴン、カドモスの部下たちをすべて惨殺します。
  3. カドモスとドラゴンの歯から生まれた5人のスパルトイ(蒔かれた者)が、テーバイ市を創設します。
    ※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。

カドモス、アポロンに神託をこう

デルポイのアポロン神の神託を聞くカドモスデルポイのアポロン神に神託をこうカドモス

フェニキア王アゲノルに妹エウロペの捜索を命令されたカドモス。もし妹を見つけられなかった場合、追放とされます。

エウロペはユピテル(ゼウス)にクレタ島に連れて行かれました。ユピテルの秘事ですから、全世界を探しても、見つかるはずはありません。カドモスにとっては、あまりに理不尽な父アゲノル王の命令でした。

今は祖国フェニキアを遠くはなれて追放の身であるカドモス。デルポイのアポロン神に、今後のことで神託をこいました。

「一頭の牛が、荒野でお前と出会うだろう。この牛を案内者として、旅を続けるのだ。牛が休んだ草原に、壁を築き、そこをボイオティアと呼ぶが良い」

雌牛が休んだ草原

アポロンの社を出ると、清らかな一頭の雌牛が歩いていました。カドモスは牛の後をついていきます。牛はある草原までやってくると、天に「モー」と鳴きました。カドモスはこの地に口づけをし、感謝しました。

カドモスは、大神ユピテル(ゼウス)に捧げものをする儀式を行うことにしました。部下たちに清めの水を汲みに行かせます。

この草原の近くには、まだ誰も踏み込んでいない太古の森があります。その中心には、木の枝やつる草がからみついた洞窟がありました。その下に、清らかな泉が湧いていました。

軍神マルスのドラゴン

カドモスの家来を食う大蛇ドラゴンに喰われるドモスの部下たち

カドモスの部下たちが、泉に水汲みの桶を投げ入れると、静かな森に「ポシャーン」と音が響きました。その音に反応して、洞窟の奥から軍神マルス(アレス)の巨大なドラゴンが出てきました。

カドモスの部下たちは、あまりに巨大なドラコンにびっくりしました。血の気も引いて、身動きも取れず、ただただ震えているだけでした。

ドラゴンは、高く首を上げます。その後のできごとは、あっという間でした。ドラゴンはカドモスの部下たちを、噛み殺したり、胴で締め殺したり、毒の息を吹きかけて惨殺したのです。

カドモスと部下を惨殺したドラゴン

部下たちの帰りが遅いので、不審に思ったカドモスは森の中に探しにいきました。彼は、泉のそばであまりに悲惨な現実を見てしまいました。頭や腕や足を食いちぎられた部下の死体が、散乱していたのです。

ドラゴンは、今も部下たちの死体を舐めまわしたり、食いちぎっています。

カドモスが手にしている武器は、長槍と投げ槍だけです。しかし、勇気だけは人一倍あり、叫んでいました。「何ということだ! あんなに忠実だった部下たちを。仇はとってやる! できなければお前たちとともに死ぬだけだ!」

カドモスは、近くの岩を持ち上げ投げつけました。しかし、ドラゴンの硬いうろこに傷を負わせることはできません。次に彼は槍を投げると、みごと胴体に深く刺さりました。

ドラゴンは凶暴になり、刺さった槍の棒の部分をガリガリかじります。また、左右に揺すると、槍は引き抜かれました。が、切っ先だけは刺さったままです。

さらに凶暴化するドラゴンは暴れまわります。カドモスも応戦します。一進一退の攻防が続きます。

そして、カドモスの槍が口の中に少し刺さります。ドラゴンは後退します。しかし、後ろの樫の大木にぶつかりそれ以上下がれません。カドモスは「ここぞ!」とばかり槍を突き刺すと、ドラゴンの頭は貫かれ、樫の木もろとも倒れました。

カドモスと女神ミネルウァ

カドモスと女神ミネルウァカドモスに命令する女神ミネルウァ

カドモスが倒したドラゴンを見ていると、「アゲノルの子よ、どうしてそんなに見ているのだ。お前もいつか、蛇の姿になるであろう」と、どこからともなく声がします。

カドモスは震えました。恐怖で髪も逆立っています。その時、彼の守護神ミネルウァ(アテナ)が天くだってきました。「ドラゴンの歯を蒔きなさい。一つの種族が生まれます」これが女神の命令でした。

カドモスは女神ミネルウァ(アテナ)の命令—ドラゴンの歯を畑に蒔きます。

すると、土が動き、まず槍の先が、次に兜が現れてきました。それから、武器と盾を持った両腕、胴体と足が順に出てきます。こうして戦士が、多くの戦士が生まれたのです。

カドモスは、とっさに武器を手にしました。すると「いけない! 仲間同士の戦いに割り込んではいけない!」と1人の戦士が言いました。

カドモスと5人のスパルトイ、テーバイ市を創設

戦士たちは同士討ちをはじめます。最後には女神ミネルウァの勧めで争いをやめ、残ったのは5人でスパルトイ(蒔かれた者)と呼ばれます。その1人がエキオン。彼は後にカドモスの娘アガウエを妻とし、ペンテウスをもうけました。

カドモスはアポロンの神託に従い、この5人のスパルトイとともにテーバイ市を創設したのです。

カドモスは軍神マルス(アレス)と美の女神ウェヌス(アフロディテ)の娘ハルモニアと結婚します。そして、最後には2人とも蛇に変身して森で暮らすことになります。