このギリシャ・ローマ神話3つのポイント
- メルクリウス(ヘルメス)はユピテル(ゼウス)の使者であり、雑用係で、良いことから悪いことまでなんでもします。
- ユピテルは、単なる女好きではありません。神々と人間の大神でありながら、女や女神を手に入れるためには、恥も外聞もなく、自らこのように牛にまで変身します。
- エウロぺ、文字どおり『ヨーロッパ』の名前の起源になった娘です。そして、ギリシャのテーバイ市を起こしたのが、エウロぺの兄カドモスです。
※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。
アゲノル王の娘エウロぺ
メルクリウス(ヘルメス)がアルゴスを倒し、イオを助けだしてオリュンポス山に戻ってくると、大神ユピテル(ゼウス)が新たな命令を下しました。「メルクリウスよ、シドンの国の山に群れている牛たちを、海岸に追いたてるのだ」
なぜ、山にいる牛の群れを海岸に追いやるのでしょうか? ユピテルは自らが牛に変身して、牛の群れの中にまぎれこみ、娘たちに近づく作戦だったのです。
海岸の近くでは、アゲノル王の娘エウロぺがチュロスの乙女たちと花を摘んだりして遊んでいました。今回ユピテルが狙った娘が、このエウロぺです。
白い牛に変身したユピテル
大神でありながら、白い牛とはいえ獣に変身するユピテル(ゼウス)。牛の白い皮は、雪のように真っ白で美しく、その動作はとても優しそうです。はじめはエウロぺと娘たちは少し怖がっていました。
やがてエウロぺと娘たちが牛になれてくると、花輪を牛の頭に飾ってやったりしました。ユピテルもたかぶる感情をおさえて、その手にそっと口づけするだけでした。
エウロぺを背に乗せたユピテル、クレタ島へ
乙女たちが白い牛にだいぶなれてきたある日。エウロぺは、座っている牛の背に腰をおろしてみました。
その瞬間、牛は立ち上がると海の中に走っていきました。神の変身した牛です。その速さに、エウロぺは片手で牛の角をにぎり、片手で牛の胴体にしがみついているのがやっとです。
また、乙女たちも何が起こったのかわからないまま、エウロぺを乗せた牛ははるかな沖合に出ていました。乙女たちが「エウロぺ~」と叫んでも、その声はもはや彼女に届くことはありません。
ユピテルはクレタ島に行くと、大神の姿にもどり、エウロぺを抱きました。生まれた子がミノス。後にクレタ島の大王となり、ミノア文明(クレタ文明とも)をおこしました。