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テーバイ市テーバイ市

アイスキュロス作『テーバイ攻めの7将』No.2
第四オンカ・アテーナの門、第五北の門、第六ホモロイデス門、第七門の敵将に対する将を手配します。これで両軍ともすべての将が決まり、いよいよ決戦まじか!
アルゴス勢の中で、第六ホモロイデス門の将、予言者アムピアラモスだけは、この戦いの不幸な結果を知っていました。それでも、高潔な心をもつ彼は戦うつもりはなくても、仲間なので参戦していたのです。
そして、第七門の敵将は兄ポリュネイケス、それに対するのは弟エテオクレスです。兄弟はどちらも、これは父オイディプスの呪いだと覚悟を決めています。

アイスキュロス[2]テーバイ市7つの門の両軍の将がすべて決定!

アイスキュロス作『テーバイ攻めの7将』No.2
コロス(合唱隊)=テーバイの乙女たち
オイディプスの息子=兄ポリュネイケス(アルゴス勢)/弟エテオクレス(テーバイ王)

(テーバイ城内の広場。外には敵のアルゴス勢)

第四オンカ・アテーナの門の敵将はヒッポメドン

使者
四番手はオンカ・アテーナの門を受けもつ大男ヒッポメドン。
大音声で迫って、合戦を求めて荒れ狂っています。巨大な円型の楯を見れば、ロから火の渦巻きと黒煙を放つ最強怪物テューポーン。円盤の縁は蛇が絡みついて、身の毛もよだちます。
エテオクレス
女神アテナが、この男の駿慢の心を憎み、奴を恐ろしい蛇のように雛鳥から遠ざけて下さることであろう。オイノプスの見事な子ヒュぺルビオスがこの男に立ちむかうぺく選ぱれた将じゃ。彼の楯には、父なるゼウスが雷を持っている。ゼウスが戦いでテューポーンよりも強いものならぱ、われらは勝者。やつらは敗者の側であるは明白。
コロス
憎まれた姿の、ゼウスの敵をもつ男は
必ずわれらが門の前に首を落すことであろう。

第五北の門の敵将はハルテノパイオス

使者
さて、北の門にさしむけられた五番手の者は、アルカディアのアタランテの子ハルテノパイオス。「パルテノス(乙女)」という名と違い、猛々しい若者。
「たとえゼウスの意にさからおうと、カドモスの都を必ずや荒らてみせようぞ」
よそ者ではあるが、アルゴスに養育の恩を報いんものと、われらが城を威嚇しております。青銅造りの楯には、生肉を喰らうスフィンクスの姿があり、カドモス人の一人をおさえつけています。
エテオクレス
彼に対するは、第四の門のヒュペルビオスの兄弟アクトルだ。彼は、楯の上に憎むぺき怪物スフィンクスの姿をもつ男を城の中に入ることを許さぬであろう。スフィンクスは城壁の下で激しく打ち叩かれて、外から中へ行こうとする者に小言をいうことであろう。
コロス
なにとぞ、神々、この地が彼らの墓場となりますように!

第六ホモロイデス門の敵将は、高潔の予言者アムピアラモス

使者
六番手の者は、ホモロイデス門を受け持つ予言者アムピアラモス。勇将テュデウスを散々罵った将です。
また、彼は殿の御兄弟ポリュネイケスへこのように語りました。
「このような行ないが神の御心に適うものか。後の世の人々が語りあう名誉であろうか。軍を投入して、父祖の都テーバイ、一族の神々を滅ぼすことが? いかに正義でありえようか? おれは、敵の地の下深く身をかくし、予言者としてこの地を肥やすことになろう。いざ、戦おう、恥ある最期はとげとうはない」
予言者は青銅造りの円い楯には何の印もありません。彼の望みは、まことの勇者たるにあります。この人には智勇備わる将をつかわされますよう。神々をうやまう人は、真に恐ろしい人です。
エテオクレス
賢明、正義、勇武、敬信の士、偉大なる予言者よ。おのが心に反して不敬の旅に上った者どもと交わったばかりに、ゼウスの御心により、奴らとともども網にかかるであろう。それゆえ、彼は城門にしかけることさえすまい。勇気なく気力に欠けているからではない。いいや、アポロンの神託が実るものなら、おのれが合戦で倒れると知っているのだ。
とはいえ、彼にはラステネスを当てよう。老人の心に若者の身体の持主。眼ははやく、楯に守られぬところを槍で撃つ手もはやい。
コロス
神々よ、われらが正しい祈りを
お聴きとどけくださいまし、この町が栄えますよう
敵に戦いの禍いをむけて。

第七門の敵将は、兄ポリュネイケス

使者
第七門は、殿の兄上ポリュネイケス。それから、この町にむかって呪い祈ったことを申し上げましょう。共に骸を並べるか、おのれをはずかしめた殿を生きておればテーバイから追い払い、おのれのうけたと同じように復讐してやると言っております。

手にする円い楯には、武者をつつましやかな女性が導いています。正義の女神と称し、
「しかしてわれはこの男を帰国せしめ、彼はその町と父祖の館の享受とをその手に入れん」と。
この門は、殿ご自身のお役目でございます。
エテオクレス
おお、神々に狂わしめられ、神の大いなる憎しみ。おお、嘆かわしいわれらがオイディプスの一族よ。今日こそ、父の呪いの成就の日だ!
やつを連れ戻すか否か、いまにその印の行きつく先がわかるであろう。父祖の地に弓を引きおる時にも、正義がやつに味方なさることはよもやあるまい。このことに信をおいて、おれは行き、刃を合わそう。大将が大将に、兄弟が兄弟に、敵が敵にむかうのだ。槍と石を防ぐ脛当てをもて。
コロスの長
王様、ご兄弟と同じ恐ろしい気持におなりあそばしてはなりませぬ。カドモス人がアルゴス人と戦うだけで、もう十分でございます。流される血は贖えますが、二人の同胞が互いに殺し合ったその時には、この穢れは老いることがございませぬ。
エテオクレス
禍いを受けねばならぬなら、汚辱は避けよ。死んだ者にはそれがただ一つの利益だからな。汚辱を伴う不幸には、いかなる誉れも与えることはできまい。
コロス
王様、何を求めておいでか? 血にうえた狂乱がお心を満たしませんように。
エテオクレス
アポロンの憎悪の的なる祖父ライオスの一族は、すべて定のコキュトス(嘆きの河)の波へと追い風に乗って行け!
狂わせたのは、オイディプスの呪いだ!
コロスの長
第七の門にお行きあぞばすな! ご兄弟同士で戦ってはなりませぬ。
エテオクレス
神々が送りよこされる禍いは、逃れる事はできぬわ。

(エテオクレス退場)

→ テーバイ攻めの7将[3]兄弟ポリュネイケスとエテオクレスの死

※同じ題材を扱っても、エウリピデス『フェニキアの女たち』では門の名前と攻める将が違っています。