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このギリシャ・ローマ神話3つのポイント
  1. カドモスの娘セメレ、大神ユピテル(ゼウス)の子バッカス(ディオニュソス)を宿します。
  2. ユピテルの妃ユノ(ヘラ)は乳母に化けて、セメレにユピテルに「神の姿で訪れるよう」誓わせます。
  3. 冥府の河に誓ったユピテルは雷電を持って現れ、セメレは焼け死にます。
    ※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。

嫉妬するユノの怒り

エウロペとの浮気に苦しんだ大神ユピテル(ゼウス)の妃ユノ(ヘラ)は、今度はエウロペの兄カドモスの娘セメレが、夫の子を宿したことに怒ります。

最初、ユノは夫婦喧嘩をしようかと思いましたが、考え直しました。

「口喧嘩はなんどもしてきたが、何の利益もなかった。このままでは、大神の妃の名誉も奪われてしまう。それより、セメレを破滅させよう。彼女はわたしの閨(ねや)を汚し、夫の子を宿したのだ。それを見せびらかしたいのだ、自分の美貌もろとも。彼女は冥府の河に送られるのです。それも愛しい恋人ユピテルが、自らそこに投げ込むのです!」

ユノ、セメレの乳母に化ける

ユノとセメレ乳母ベロエになりすましたユノとセメレ

ユノ(ヘラ)はカドモスの屋敷にまいおりました。そして、セメレの乳母ベロエに身をやつし、白髪になり、顔に皺を作り、よろめきながら歩きます。

乳母ベロエになりすましたユノは、いつものようにセメレと世間話をします。その中でユピテル(ゼウス)の名が出てきたのをきっかけに、ため息をついてセメレをそそのかします。

「セメレお嬢さま、お気をおつけなさい。世間では神々を名のって、誘惑する男が多いのです。本当にユピテル様だとよいのですが……。名ばかりではあてになりません。何か証拠を見せてもらいなさい。たとえば、天上のユノ様とお会いなさる時と同じように、本来のご威光を身につけて会いにきて欲しいとか願いなさいませ」

ユピテル、冥界の河スティクスに誓う

セメレは、ユピテル(ゼウス)に贈り物が何か明かさずにお願いしました。

ユピテルは答えます「好きなものを選ぶが良い」。さらに「ウソだと思うなら、冥界の河スティクスに誓うぞ。この河神に誓うと、もはや神々でさせ撤回できないのだ」

セメレは喜んで願いました「愛のちぎりを交わす時、ユノ様を抱かれる時と同じ姿で、わたしを抱いてくださいませ」。ユピテルがセメレの口を塞ぐ前に、その願いは言われてしまったのです。

ユピテルは、うめきました。大神であろうと、もはや冥界の河に誓ったことを撤回することはできません。その日、大神は悲しげな面持ちで、天界へ帰って行きました。

セメレ、ユピテルの雷電に焼け死ぬ

ユピテルは、ギガンテス(巨人族)との戦いの後、あの最強の怪物テュポエウス(チュポン)を叩き落とした雷ていは脇におき、最も威力の小さい雷電を手にしました。だからといって、人間が耐えられるものではありません。

ユピテルがセメレの部屋に入ったとたん、彼女は焼け死にました。彼女のお腹に宿っていた未熟児のバッカスは、ユピテルによって取り出され、大神の太腿に縫い込まれました。

バッカスは生まれると、セメレの姉妹イノによって育てられます。その後、ニュサ山のニンフ(ニュシアデス)に引き渡されます。

バッカス、ニュシアデスに

※この絵では、イノに育てられることなく、メルクリウス(ヘルメス)からニュシアデスに渡されています。絵画では、この設定が多いです。