- アポロン神より体重がかるいパエトン。馬車の4頭の馬はそれに気づき、暴走しはじめます。
- 天も地も海も、火で焼かれていきます。大地の女神は大神ユピテル(ゼウス)にどうにかしてくれと叫びます。ユピテルは、雷ていでパエトンを打つことにします。
- 残されたパエトンの姉妹ヘリアデスは悲しみ、ポプラの木に変身します。そして、流れた涙は琥珀となり、女性のアクセサリーの材料になります。
※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。
暴走する太陽神の4頭の馬
とうとう、太陽神の馬車に乗ったパエトン。彼の前には、天空がひろがっています。女神テテュスが厩舎のとびらをひらくと、いつものように4頭の馬たちが走りだします。
すると、急に馬車がはね上がりました。それは、大人のアポロン神より子どものパエトンのほうが軽いからです。4頭の馬たちは馬車に乗っているのがいつものアポロン神でないと気づきました。すると、暴走しはじめ、正しい太陽の道からもはずれていきます。
パエトンは、恐くなりました。馬をあやつることも、馬車を太陽の道に正しく戻すこともできません。子どものパエトンには、なにもできることはないのです。
夜空をいろどる星座は、じつは怪物なのです!
眠っていたヘビは目をさましカマ首をあげると、パエトンをにらみます。また、サソリやカニも熱さであばれはじめます。いろいろな天空の怪物がさわぎだし、パエトンはぶるぶるふるえました。
パエトンは下を見おろすと、その高さに目がくらんでしまいます。パエトンは、こんな太陽神の馬車に乗らなければ、父アポロン神の言うことをきけばよかったと後悔しました。
天と地、海が火に焼ける
馬車は太陽の道を大きくはずれたり、天高く登っていったかとおもうと、地上すれすれを通ったりします。月の女神ディアナ(アルテミス)は、兄アポロンの馬車が自分より低いところを走っているのにはびっくりしてしました。
山の雪はとけ、すぐ蒸発して消えてなくなります。町も村も、お城も火で焼かれます。高い塔はひびわれ、くずれてしまいます。川や湖からは水がなくなり、森のニンフも泣き出します。大きなサハラ砂漠は、このときにできたと言われています。
海の中では、魚やイルカたちがまだ水が残っている深いところにかくれます。海の神ネプトゥヌス(ポセイドン)も、3回海面に顔を出しましたが、3回とも熱さでひっこんでしまったほどです。
大神ユピテルに助けをもとめる大地の女神
大地の女神は、とうとう天界のユピテル(ゼウス)に叫びました。
「神々の王よ、わたしがなにか悪いことをしたとでも言うのですか。この焼かれていく大地だけでなく、天の雲もなくなり、海水がひいて海の広さもなくなっていきます。このままだと、天も、海も、地もほろんでしまい、世界は元のカオス(混沌)にもどってしまいます。この世界と生きているものをお助けください」
ユピテル、パエトンを雷ていで打つ
大神ユピテル(ゼウス)はパエトンの父アポロン神をはじめ、すべてのオリュンポスの神々をあつめました。そして、この焼けていく世界をどう助けるかを神々に知らせました。つまり、パエトンを打つということです。
そのすぐ後、ユピテルは天の頂きへとかけ上がると、雷ていをおこし右の手にもつと、パエトンに投げつけました。
パエトンの墜落
雷ていに打たれたパエトン。髪の毛は真っ赤にもえあがり、ながれ星のようにまっさかさまに空中を落ちていきます。また、4頭の馬たちは、それぞれバラバラの方向に走っていきます。馬車は地におちると、バラバラになりました。
落ちてきたパエトンを受けとめたのは、河の神エリダノスです。煙でくすぶったパエトンの顔をあらうと、水のニンフがパエトンを河のほとりに埋葬しました。
パエトン、ここに眠る
父アポロン神の馬車に乗るも
力およばず、地に落ちる
パエトンの姉妹ヘリアデス、ポプラの木に変身
パエトンの母クリュメネは、パエトンの亡骸を求めて世界中を歩きました。パエトンの墓を見つけると、墓石をだきしめ、毎日泣きつづけていたといいます。
ポプラに変身する太陽の娘たち(ヘリアデス)
また、パエトンの姉妹「太陽の娘たち(ヘリアデス)」も悲しみ、墓のまえで長いあいだ泣いていました。すると、長女は足がかたくなり動けなくなりました。そのそばにかけよろうとした次女も動けなくなりました。次の娘が髪の毛をかきむしると、髪の毛は葉になっていました。
木の皮がその顔をおおうと、姉妹は母に助けをもとめました。しかし、悲しみにとらわれている母クリュメネには、娘たちにキスをしてやることしかできませんでした。
このように、姉妹はみんなポプラの木になってしまったのです。このポプラの木が流す涙は琥珀となり、澄んだ河が受け取りローマに運び、高貴な婦人につけられることになりました。
琥珀は太陽の娘たち(ヘリアデス)の涙