- 豊饒の女神ケレス(デメテル )は泉の妖精アレトゥーサと再会します。
- アレトゥーサを追う河神アルペイオス
- アレトゥーサ、女神ディアナ(アルテミス)に助けを願う。
※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。
豊饒の女神ケレスとアレトゥーサの再会
娘プロセルピナ(ペルセポネ)を取り戻した豊饒の女神ケレス(デメレル)。女神は、娘の消息を教えてくれた泉の妖精アレトゥーサの話をゆっくり聞こうと思ったのです。
「なぜ、あなたは故郷をのがれて、シケリアまできたのですか?」
豊饒の女神ケレスとアレトゥーサ
アレトゥーサを追う河神アルペイオス
アレトゥーサは、河神アルペイオスとの過ぎた日の物語を話しました。
「わたしは誰よりも女神ディアナ(アルテミス)様のように山を走り、狩に夢中になるような妖精だったのです。しかも評判では美しかったのですが、ほかの乙女とは違い、ほめられても嬉しくはありませんでした。むしろ恥ずかしいと思っていたのです。男を引きつけるのは罪悪と。
ある日、ステュムパロスの森から帰る時のことです。その日はとても暑く、狩の疲れもありました。ふと、静かに流れている、川底の小石まではっきり見える澄んだ川を見つけました。川辺にはポプラや柳の木が茂っていて、とても気持ちのいい場所でした。
わたしは、足の先を水の中に入れてみました。冷たさが気持ちよく、衣服を脱いで水の中で泳ぎはじめました。しばらくすると、流れからささやき声が聞こえてきました。わたしは怖くなり、岸に上がったのです。すると……
『アレトゥーサ、どこへそんなに急ぐのだ?』河神アルペイオスでした。
わたしは、裸のまま逃げだしました。だって衣服は、反対側の岸にあったからです」
アレトゥーサ「ディアナ様、お助けを!」
「『アレトゥーサ、どこへそんなに急ぐのだ?』河神アルペイオスはわたしを追いかけてきます。長いあいだ逃げていましたが、わたしは疲れてしまい、もう走れなくなっていたのです。また、河神の影がとうとうすぐ背後に迫ってきました。
わたしは、叫びました。
『ディアナ(アルテミス)様、お助けを。でなければ捕まってしまいます。女神様の弓と矢をいつも運ばせていただいたこのお供をお助けください』
女神ディアナ様は、わたしのまわりを雲で包み隠してくれました。河神アルペイオスはわたしが急に雲で見えなくなったので、まわりを戸惑いながら歩き回ります。『アレトゥーサ、アレトゥーサ』と叫びながら。
わたしは雲で守られていましたが、怖さで動くこともできません。わたしの体には冷たい汗がふき出してきて、冷や汗が滴りはじめました。すぐに、地面は池のようになったのです。
わたしは水になってしまいました、それに気づいたアルペイオスも水の姿に戻り、わたしと1つになろうとしました。
その時です。女神ディアナ様は大地を切り開いてくれたのです。水になったわたしは地下の中を流れて行きました。そして、再び地上に出たところが、このシケリア島のシュラクサイだったのです」