- 牧神パーンの自惚れと愚かさが身の危険を招く
- アポロンの竪琴vs牧神パーンの葦笛
- 「王様の耳はロバの耳!」とささやく葦
※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。
牧神パーンの自惚れと愚かさ
ミダス王は「触れるとなんでも黄金に変える」災いから富を憎むようになり、田園によく出かけるようになりました。そんなことから、山の洞窟に住んでいる牧神パーンを崇めるようにもなりました。
プリュギアのトモロス山で、パーンはかわいいニンフたちに歌の自慢をし、葦笛を奏でていました。その時に、パーンは愚かにも、アポロン神の歌より自分の方が上手いと言ってしまったのです。
アポロンが怒らないはずはなく、老いた山の神トモロスを判定者として「アポロン神vs牧神パーン」の歌比べをすることになりました。
牧神パーン
アポロン神vs牧神パーン
「準備は完了だ、お前からどうぞ」
樫の冠だけをかぶった老いた山の神トモロスは、牧神パーンの方を見ながら言いました。パーンは葦笛を手にすると、プリュギアの田舎風な曲を奏でました。そこにいたミダス王は、その曲に魅惑されました。
パーンの曲が終わると、トモロスはアポロン神のほうへ顔を向けます。
今度は月桂樹の冠をかぶったアポロンが、宝石と象牙で飾られた竪琴をとりました。その甘美な調べにうっとりしたトモロスは、パーンに負けを認めさせました。聞いていたニンフや牧神たちも、トモロスの判定にうなづきました。
しかし、ミダス王だけは、この判定に反対したのです。アポロンは、ミダス王に我慢がならなくなりました。人間の耳の形をしているのに、鈍感なことに腹を立てたのです。
すると、ミダス王の耳は長く伸びはじめ、一面に白い毛が生えてきました。その耳は動くようになりました。ミダス王の耳は、ロバの耳に変わったのです。
アポロン神vs牧神パーンとミダス王
「王様の耳はロバの耳!」とそよぐ葦
ミダス王は自分の耳がロバの耳に変わってしまったのが恥ずかしくて、いつも衣で頭からすっぽり隠していました。しかし、王の髪を切る理髪師には、隠すことができません。とうぜん、王は「口にしたら、殺す」と厳命しました。
理髪師は、自分が見た「王様の耳はロバの耳!」と口にしたくてもできません。だからといって、我慢できるわけがありません。
夕方になると、理髪師は館をこっそり抜け出し、野原に行くと地面に穴を堀ってその穴にささやいたのです。「王様の耳はロバの耳!」と。その後、その穴に土をかけました。
一年後、野原には葦が一面に生えてきて、風にそよぐようになりました。そして、表には出てはならない理髪師の声も、ささやきだしたのです。
「王様の耳はロバの耳!」