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このギリシャ・ローマ神話3つのポイント
  1. 酒神バッカス(ディオニュソス)の鉄槌、船乗りをイルカに変身させます。
  2. ペンテウス王は、みずからバッカスの秘儀が行われているキタイロン山に偵察に。
  3. 二人の叔母アウトノエとイノはペンテウス王の両腕をひきちぎり、母アガウエは首を引き抜きます。
    ※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。

バッカス、船乗りをイルカに変える

アコイテスは、ペンテウス王に語ります。

「船が動かなくなると、船乗りのからだが黒ずんできたかと思うと鱗が生じ、その背骨が曲がり始めました。口は大きく裂け、鼻が鉤なりに曲がり、伸ばした手は短くなりヒレのようになりました。両足はくっつき尾となり、その先は半月状になったのです。

このように、船乗りはみんなイルカに変身したのです。かれらは海に飛び込むと、水面からしぶきをあげて飛び上がり、また水面下に潜ります。

わたしは怖くなり、ぶるぶる震えていました。すると、バッカス(ディオニュソス)様がこうおっしゃってくれました。『怖がることはないよ。ナクソス島へ向かうのだ』と。

わたしはナクソス島で降りると、そのまま神様の祭儀に加わり、帰依することになったのです」

アコイテスの脱獄

「ずいぶんと長たらしい話だな」とペンテウス王。「長引けば長引くほど、怒りはしずまると思ったかな。ものども、こやつを牢屋にひったてろ。恐ろしい拷問で痛めつけてから、冥府に送ってやるのだ」

手を鎖で縛られたアコイテスは、厳重な牢に閉じ込められました。

ペンテウス王の家来が拷問の準備をはじめている間に、不思議なことに牢の扉は自然にあいて、鎖もほとけ、アコイテスはいつの間にか逃げていました。

ペンテウス王の最後

ペンテウス王の最後叔母アウトノエとイノに腕を引きちぎられるペンテウス王

アコイテスの不思議なことがあっても、ペンテウス王は頑なままでした。とうとう、王はバッカス(ディオニュソス)の秘儀が行われているキタイロン山に行くことにしました。

秘儀が行われているのは、森の木々に囲まれた野原でした。ペンテウス王は何も隠れるものがない場所にいたのですから、すぐ見つかってしまいました。見つけたのは、王の母アガウエでした。

「ねえ、妹たち。あすこに大猪がいる。わたしたちの手でしとめねば」

その声に狂ったバッカスの信女たちは、いっせいに1人だけのペンテウス王に殺到しました。さすがに王も震え出しました。襲ってきた信女たちの中に叔母アウトノエを見つけると「叔母うえ、お助けを! あなたの息子アクタイオンの霊魂に免じて」

しかし、アウトノエはペンテウス王の右腕をもぎとりました。すると、もう一人の叔母イノが左腕をちぎりとったのです。王は両腕のない体で正面にいた母アガウエに助けを求めました。「母上、ごらんください!」

しかし、母アガウエはうなり声をあげると息子に飛びかかり、首を引き抜いたのです。

母は血がしたたる首を持ち上げると、さけびました。「ねえ、みんな、この勝利はわれらの手で勝ちえたのよ!」。さらに、信女たちは王に襲いかかると、王の体をバラバラにしました。

このようなことがあったので、テーバイの女たちはみんなバッカスに帰依し、新しい祭儀を受け入れました。こうして、酒神バッカスは母セメレの故郷に凱旋を果たしたのです。

※アクタイオンは、女神ディアナ(アルテミス)に鹿に変身させられ狩られて死にました。→鹿に変身したアクタイオン