- ナルキッソスは、妖精レイリオぺを母とし、乱暴な河神ケピソスが父の子です
- 大神ユピテル(ゼウス)の浮気の現場をおさえようとしたお妃ユノ(ヘラ)を怒らすおしゃべりエコー。
- 恋こがれるナルキッソスの仕打ちで、"こだま"だけの存在になります
※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。
ナルキッソスの母レイリオぺ
ある日、水辺に住む妖精レイリオぺは、河神ケピソスの流れに閉じ込められ乱暴されました。そして、生まれたのが、多くの妖精たちから愛される可愛いナルキッソスです。
母レイリオぺは、ナルキッソスが長生きできるかどうか、テーバイ市の予言者テイレシアスにたずねました。予言者は「自らを知らないでいればな」と答えました。
16年後に、その予言が当たっているハッキリします。
16歳になったナルキッソスはその容姿からはうかがい知れないほど、冷たい性格をしています。寄り添ってくる若者、乙女みんな拒否しました。父・河神ケピソスの性格が遺伝しているようです。
エコーが"こだま"だけの存在になった2つの理由
エコーの答えはどれほど甘い
妖精エコーは今は"こだま"だけの存在ですが、もとは身体もちゃんとあったのです。
なぜ、"こだま"だけで応えるだけの存在になったしまったのでしょうか?
それには、2つの理由がありました。1つは大神ユピテル(ゼウス)の妃ユノ(ヘラ)を怒らせたこと。もう1つは、恋こがれるナルキッソスに相手にされなかったことです。
ユノ(ヘラ)を怒らせたこと
ある日、大神ユピテルがニンフと一夜を過ごしている現場を突きとめた妃ユノが、エコーがいる森にやってきました。
いつものように、わざとエコーがユノと長いおしゃべりをはじめます。その間に、ユピテルは逃げてしまうのです。何度もユピテルに逃げられていたユノは、そのことに気づきました。
「わたしをだましたその舌を、少ししか使えないようにしてあげます」
こうして、エコーは自分から話すことができなくなりました。しかし、相手の話の終わりを繰りかえすことだけは許されました。
エコーとナルキッソス
ある日、エコーは仲間と鹿狩りをしているナルキッソスに一目惚れしました。もとはおしゃべりなエコーですから、自分の恋心をどれほどナルキッソスに語りかけたかったでしょうか?
しかし、語りかけることは許されていません。ナルキッソスの言葉を待つしかできないのです。たまたま、仲間からはぐれたナルキッソスは、みんなに声をかけます。
「誰かいないのかい、この近くに?」
「この近くに」エコーです。
「こっちに来てくれないか?」
「来てくれないか」
「どうして、僕から逃げるんだい?」
「僕から逃げるんだい」
「こっちで会おうよ」
「こっちで会おうよ」
そう答えたエコーは嬉しさのあまり、出ていくとナルキッソスに抱きつこうとしました。ナルキッソスは逃げ出します。
「ごめんだ、手を離すんだ! 死んでからにしてくれ!」
「死んでからにしてくれ!」
悲しみにふさぎ込んでしまったエコー。森の奥の洞窟に引きこもりました。夜も眠れない体はどんどん痩せ細ります。骨は石になったといいます。こうして、エコーは"こだま"だけの存在になったのです。