- 女神ミネルウァ(アテナ)に、機織りの技が一歩も引けを取らないアラクネ
- 女神ミネルウァ(アテナ)の忠告と機織り勝負
- アラクネ、クモに変身する
※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。
アラクネ「女神様もわたしと勝負すればいいのに」
女神ミネルウァ(アテナ)は、ムーサ(詩神)たちがピエロスの娘たちをカササギに変身させたことをたたえました。また、心の中で思いました。「わたしも神威がないがしろにされている。それに対して罰を与えなければいけない」
それは、アラクネという娘のことでした。彼女の機織りの技は、リュディアの町々では名声をえていました。彼女が機織りを始めると、女性だけではなく、山の妖精も、水の精たちも見にやってくるのです。それは、織っている彼女の素晴らしい技を見るのが楽しいからでした。
機織りの技術を人間に与えたのは女神ミネルウァ。彼女はそれを否定し、憤慨してこう言います。「女神様もわたしと勝負すればいいのに。わたしが負けれは、お好きなようになさればいい!」
女神ミネルウァの忠告と機織り勝負
老婆に変装した女神ミネルウァ
女神ミネルウァ(アテナ)は老婆に変装すると、アラクネに忠告します。「軽はずみなお嬢さん、わたしの忠告を無にしてはならないよ。機織で有名になるのはよい。でも、女神様には一歩を譲らなければいけません。今までの公言の許しをこえば、女神様だって許してくださるから」
怒りで顔を真っ赤にしたアラクネ 。振りあげた手を止めると言い放ちます。「老いぼればばあ、よくも長生きしてきたこと。そんな説教は、嫁さんや娘さんにすればいいこと。わたしには必要ないわ。でも、女神様はどいうしてご自分でこないの? いらして勝負すればいいのに!」
「もう、おいでになっているのだよ」と言うと、女神ミネルウァは神の姿を表しました。驚いた女たちや妖精たちは、頭を下げて女神を崇めます。一方のアラクネは一瞬顔を赤くしただけで、すぐに平然とした顔に戻りました。
こうして、女神ミネルウァvsアラクネの機織り対決が始まったのです。
女神ミネルウァvsアラクネ
女神ミネルウァ(アテナ)はある都市をかけた海神ネプトゥヌス(ポセイドン)との勝負を織りました。大神ユピテル(ゼウス)をはじめオリュンポスの神々の面前での勝負です。
海神ネプトゥヌスが岩を三叉の矛で打つと海水がほとばしり出ます。一方。女神ミネルウァが槍で大地を打つと、オリーブの若木が生えてきました。
「オリーブの木は、未来にわたって都市の役に立つ」と、勝負で勝ったのが女神(アテナ)です。そして、この都市の名はアテナイとなったのです。また、織物の四隅には神をないがしろにした4人の者たちが、罰を受ける絵も織りました。それは、アラクネに対する忠告だったのです。
一方のアラクネは、雄牛になってエウロペに近づく大神ユピテルの不貞を織りました。また、海神ネプトゥヌス、アポロン、バッカスの不貞など神々をおとしめる絵柄も織りました。それは素晴らしい織物で、けっして女神ミネルウァに劣るものではありませんでした。
梭を持つ女神ミネルウァから逃げるアラクネ
蜘蛛に変身させられたアラクネ
女神ミネルウァ(アテナ)には、アラクネの織物のできばえがしゃくにさわりました。女神はその織物を手に取ると、引き裂いてしまいました。また、手にしたキュトロス産のツゲの梭(ひ:用具)で、二度、三度アラクネを打ちすえました。
かわいそうなアラクネはその場から逃げると、首をくくってしまいました。
さすがに哀れに思った女神ミネルウァは、彼女を抱き上げるとこう言いました。「高慢な娘さん、生きていきなさい。でも、ぶら下がったままでね。この先も、お前の一族はずっとぶらさがったままの運命なのですよ」
こう言うと、女神は魔法の草の汁を彼女にふりかけました。すると、アラクネの髪の毛は抜け落ちました。鼻も両耳も落ち、頭と体はたいそう小さくなりました。腕は体にくっついて指だけが長い脚となったのです。さらに腹からは糸を吐き、今も機織りをしているクモになったのです。
蜘蛛になったアラクネ