- コルキスの王妃で最強最悪の魔女メデイア、イアソンに一目惚れする
- メデイアの祖国コルキスへの裏切りとギリシャへの憧れ
- メデイアの現実的な恐れと迷い
※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。
コルキスの姫メデイア、イアソンに一目惚れ
コルキスの王アイエテスを訪問すると、イアソンは祖先のプロクリスがこの地に残した金羊毛皮を求めました。
アイエテス王は金羊毛皮と引き換えに、イアソンに恐ろしい多くの難題を課します。王の娘メデイアはイアソンに一目惚れして、この恋は理性では抑えることができないと感じています。
「抵抗しても、無駄なこと。恋するって、こんなことなのかしら。それにしても、お父様の命令は酷すぎる! ああ、イアソン、あなたの安否が気にかかる。ああ、情熱と理性が別々のことをすすめる。どうして、異国の男に、異国での結婚を夢見るの?
あの方が死ぬも生きるのも、神々の御心よること。でも、どうか生きていてほしい。冷静にみても、イアソンは何も悪いことはしていないのだから。彼の若さ、生まれ、勇気に恋しないものがいるかしら?
わたしが助けなければ、彼は雄牛たちの炎で焼かれてしまう。竜の歯をまけば、生まれ出る兵士に殺されてしまう。たとえその2つをクリアできても、金羊毛皮を守っている竜には勝てない。竜の餌食になってしまう。
たとえ父の命令でも、そんなことを許しては、わたしは冷たい女になってしまう」
メデイアとイアソン
祖国への裏切りとギリシャへの憧れ
「それでは、わたしはお父様を、祖国を裏切るというの? わたしが助けた男は、わたしを残して故郷へ帰り、他の女の夫になる? わたしには父からの罰だけが残されている。そんな別な女と一緒になるなら、イアソンは死ぬがいい!
でも、あの方の顔、高貴な心、美しい姿からはわたしをだましたり、わたしの親切心を忘れたりはしないだろう。はじめに約束してもらえばいいのだ。証人には、無理にでも神々になってもらおう。
イアソンは、わたしの恩義をいつまでも忘れないだろう。結婚すれば、ギリシャの町々で、助かった若者たちの母からも感謝されるだろう。
では、父や、弟や妹、生まれ故郷やその神々を、おまえは捨てて、船出しようとするのか? そうよ、わたしが捨てるものは大したものじゃない。わたしの中には強大な神が宿っているし、追いかけるのはこんな辺境の地では決して得られないギリシャの偉大なものばかり。
それに、全世界の宝物に匹敵するイアソンが、わたしの夫。わたしは世にも幸せな、神にも愛された女と言われよう」
メデイアの現実的な恐れと迷い
ギリシャへの憧れを持つメデイアですが、航海の恐ろしい現実へも思いがはせます。
「イアソンと一緒に船出すれば、船をも打ち砕く〈打ち合わせの岩〉、シケリア海にいるという潮を吸いこんだり吐いたりする怪物カリュプディス、猛犬6匹を腰にまいた怪物スキュラ、みな見たこともない恐怖が待っている。
でも、わたしはイアソンの胸に飛び込んで、遥かな海を渡っていきたい!
ああ、メデイア、おまえはこれを結婚と呼ぶの? どれほどいけないことをしようとしているの、考えなさい。今のうちに、罪を逃れなければ!」
彼女の目の前には、「正しさ」「人の道」「慎み」が立ちふさぎ、「愛」は旗色が悪くなってきたのです。
情熱と理性のはざまで迷うメデイア