- シュリンクスというニンフから、葦笛ができたという話。
- メルクリウス(ヘルメス)神はアルゴスの100の目をすべて眠らせ、イオを助けだしました。
- アルゴスの100の目は、大神ユピテル(ゼウス)の妃ユノ(ヘラ)の愛鳥クジャクの模様になります。
※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。
美しい森のニンフ、シュリンクス
むかし、シュリンクスという森のニンフがいました。彼女は、まるでアポロン神の妹、月の女神ディアナ(アルテミス)と同じくらい美しかったのです。ただ、ディアナの弓は黄金でできていましたが、シュリンクスの弓は動物の角でできていました。
ある日、パン(ケンタウロス)は森でシュリンクスをみかけ、彼女を好きになります。パンとは、森や野原でヒツジやヤギをかっている半分が人間で、半分が動物の神です。神といっても、いたずら好きで、酒が好きで乱暴なところがあります。
シュリンクスは、パンを好きにはなりません。それでも、パンはあきらめず、彼女を追いかけました。
葦に変身するシュリンクス
パンから逃げてきたシュリンクスは、とうとう川の岸まできて、これより先には進めなくなりました。彼女は大きな声で、なかまの森のニンフに「わたしを変身させて」と叫びました。
パンがシュリンクスをつかまえたと思ったそのとき、彼女は葦になっていたのです。
パンが「あ〜」とため息をすると、そのときの空気が葦の茎をふるわせ、かすかですがきれいな音色がしました。パンはその音にきづくと、数本の葦の茎の長さをかえた笛をつくりました。だから、この笛を「シュリンクス(葦笛)」と呼ぶようになったのです。
パンとシュリンクスのまぼろし
アルゴスの100の目がみんな閉じる
メルクリウス(ヘルメス)神が『シュリンクスの話』をしていると、とうとうアルゴスの100の目がすべて閉じました。すかさず、メルクリウスはアルゴスの首をはね、イオを助けることができたのです。
大神ユピテル(ゼウス)は妃ユノ(ヘラ)に「もうイオとはぜったいに会わない」と誓ったので、ユノはイオをもとの娘の姿にもどすのをゆるしました。
その後、イオはエジプトの女神として、崇拝されています。イオとユピテルの子が、エジプトのエポパスです。彼はパエトンに「お母さんの言うことなら、なんでも信じるんだ。アポロン神をお父さんだと思いこんで、いばるんじゃないよ」と非難したのです。この言葉が、やがて『パエトンの墜落』をひきおこすことになります。
ところで、アルゴスの100の目ですが、ユノは自分の愛鳥のクジャクの羽にとりつけたのです。