このギリシャ・ローマ神話3つのポイント
  1. 「アウラ(そよ風)よ、ここへおいで!」この言葉が誤解を生みます。
  2. プロクリスはケパロスの不倫を疑い悲嘆します。
  3. 的を外さない槍が、様子をうかがうプロクリスをつらぬきます。
    ※神の名前は、ローマ神話名(ギリシャ神話名)です。

アウラよ、ここへおいで!

アテナイの使者ケパロスは、アイギナ島アイアコス王の末子ポコスに語ります。ついに、槍にまつわるケパロスとプロクリスの悲劇が語られるのです。

「ポコス殿、戻ってきた妻プロクリスとの生活は、幸せに満ちていました。2人の邪魔をするものはないと信じていました。

私は、山や森に狩に出ることが多くなりました。暑い日の狩りの後には、冷え冷えした谷からの微風を求め、涼しい木陰の草の上に横たわります。そんなとき、思わずこんな言葉を口にしていました。その言葉が……

『アウラ(そよ風)よ、ここへおいで! やって来てわたしを喜ばせ、わたしのこのふところに入るのだ、愛しき者よ! さあ、いつものように、身を焦がすこの暑さを和らげておくれ!』

さらに、誰もいないことから、わたしはこんなこともつぶやいていました。

『おまえは、私の大きな喜びだ。わたしを元気づけ、愛撫するおまえの息吹を、いつもわたしはこの口に感じたいと思う』

このわたしの言葉をだれかが聞いて、アウラを乙女か妖精の名だと勘違いしたのです。つまり、わたしが誰かに恋していると考え、妻プロクリスに伝えたのです」

誤解がプロクリスを悲嘆させる

ケパロスを見はるプロクリスケパロスを見はるプロクリス

ケパロスは、ポコスに語りつづけます。

「彼女は悲しみのあまり、崩れるように倒れたといいます。気がつくと、『惨めなわたし、不当な運命の犠牲者よ!』とわが身を呪い、わたしの不実を嘆いたのです。本当に恋敵がいるかのように。

でも、かすかな希望も頭をもたげます。『ただの間違いに違いない!』と。自分の目で確かめねは、信じられないのです。

次の日、私はいつものように狩りに出かけ十分な成果をあげると、いつものように涼しい木陰の草の上に寝ころんでいました。『アウラ(そよ風)よ、ここへおいで! やって来てわたしを喜ばせ、わたしのこのふところに入るのだ……』

そのとき、わたしは草むらから吐息のようなものが聞こえたと思ったのです。もう一度『アウラよ、ここへおいで!』と言ってみました。ふたたび落ち葉がかさこそと音を立てるではありませんか!

わたしは獣に違いないと思い、槍を投げたのです。けっして的を外すことのない槍を」

槍がプロクリスの胸をつらぬく

ケパロスとプロクリスケパロスの槍で倒れるプロクリス

ケパロスは、ポコスに語りつづけます。

「なんということでしょうか! 胸をつらぬかれたプロクリスは、『ああ!』と叫びました。わたしは声で彼女だとわかると、いそいで彼女のところへ駆けつけました。

彼女の胸や衣は血まみれで、その手で槍を抜こうとしていました。わたしは彼女の体を抱きおこすと、傷口を抑え血を止めようとしました。

瀕死の状態で、プロクリスは声を絞るように言ったのです。『もし、まだ愛があるなら、どうかお願いです。わたしが死んでも、アウラを私たちの寝所に入れないでください』

なぜプロクリスがここにいたのか? わたしは、理解しました。誰かが彼女に告げたアウラという名を誤解したのです。『アウラとは、そよ風のことだ。ここには乙女はいないのだ』と説明しましたが、いまさらなんの役に立つでしょうか。

死につつあるプロクリスは、じっとわたしを見つめていました。その瞳は優しく、顔は晴れやかでした。そして、安心して息を引き取ったのです」

語るも、聞くも涙の物語です。

この後、ケパロスはアイアコス王からたくさんのミュルミドン(アリ人間)の兵士たちを借り受け、アテナイへ帰っていったのです。

幸せだったケパロスとプロクリス幸せだったケパロスとプロクリス、犬のライラプスもいます。

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